最新記事

インタビュー

東大卒プロゲーマー「ときど」を世界一に変えた1冊の本

2021年5月10日(月)11時15分
朴順梨(ライター)
ときど、eスポーツ

Photo: 遠藤 宏

<東大大学院を辞めてプロゲーマーとなったが、大スランプに陥った。接戦で負けてしまう自分を変えたかった。そんな頃に出合ったのが『メンタル・タフネス』。この本から自分なりのルーティンを取り入れたという>

勝負の世界は、練習しないと勝てないけれど、練習すれば必ず勝てるわけではない。だから勝負に挑む人は皆、自分なりの試行錯誤を続けている。

プロ格闘ゲーマーのときど(本名:谷口一)さんも、もちろんその一人だ。

大学教授の父を持ち、麻布中学・高校を経て東京大学に進学したときどさんは、2010年に日本で2人目のプロゲーマーとしてデビューした。以来「ときど式」と呼ばれる独自のプレイで好成績を残してきたものの、3年後に大スランプに陥り、勝てない日々が続いた。

そこでゼロから再チャレンジし、2017年に参加した世界最大の格闘ゲーム大会「EVO(Evolution Championship Series)」では、2000人以上が出場した『ストリートファイター5』部門で優勝。そうしたキャリアを重ねるなかで出合ったのが、『メンタル・タフネス――ストレスで強くなる』(CCCメディアハウス)だ。

テニス選手のモニカ・セレシュをはじめ、トップアスリートの指導に当たってきたスポーツ心理学者、ジム・レーヤーによる同書は、IBMやメリルリンチなど一流企業からも高い評価を得て、世界的なベストセラーに。

プレッシャーのもとで実力を最大限に発揮するための20年の研究成果をまとめた一冊だが、この邦訳も1998年に刊行されて以来、ロングセラーとなっている。

『メンタル・タフネス』は、eスポーツという競技の舞台で戦うときどさんに、どんな変化をもたらしたのか。

接戦で負けてしまう自分を変えたかった

――スランプから復活するまでを描いた著書『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』(ダイヤモンド社)で、『メンタル・タフネス』について触れています。何がきっかけでこの本を読んだのですか?

2017年頃に、ゲーム仲間の古い友人に勧められたんです。僕よりずっと年上の彼はボクシングとかテニスとか、いろいろなスポーツが好きな人でした。

ある時「テニスはメンタルが大事なスポーツで、超一流のアスリートはメンタルを鍛えることを心がけている。この本だけでは最新のトレーニング法は分からないかもしれないけれど、メンタルを鍛える勉強をしておくといいかもしれないね」と言われたので、そこまで言うなら読んでみようと。

当時の僕は接戦で負けてしまうことが多くて、その解決策を探していたというのもあるのですが、「これでメンタル的にタフになれるのなら、ちょっと試してみたいな」と思える内容だったので、すんなり頭に入ってきました。

――ストレスと付き合いながらメンタルを鍛えることがテーマの本で、自分なりのルーティン(儀式)を取り入れることが、実力を発揮するカギになるとあります。ときどさんにも、ルーティンはありますか?

もともと「黒い服しか着ない」といった、こだわりがあるほうだったのですが、夜寝る前にプロテインを飲むとか筋トレを2日に1回やるとか、結構ありますね。

本の中で紹介されている、自分で決めたことを毎日行ったかどうかをノートにチェックするのも取り入れています。今日、そのノートを持ってきたんですよ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債権者、返済猶予延長承認し不履行回避 

ビジネス

ロシアの対中ガス輸出、今年は25%増 欧州市場の穴

ビジネス

ECB、必要なら再び行動の用意=スロバキア中銀総裁

ワールド

ロシア、ウクライナ全土掌握の野心否定 米情報機関の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 10
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中