最新記事

メンタルヘルス

敏感すぎる人に伝えたい、HSP当事者の心理学者による「強みに変える」方法

2021年2月3日(水)11時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

AntonioGuillem-iStock.

<光や音などの刺激に鋭く反応して動揺する、相手の気持ちを敏感に察知しすぎて苦しい。これは「敏感すぎる人=HSP」の特徴。日本でも急速に認知されつつあるHSPだが、その敏感さは障害ではなく、大切に育てるべき特性だという>

同僚がキーボードを叩く音が気になって仕方がない、暴力シーン満載の映画を見ると何日も眠れなくなる、友人の悲しみに共感し過ぎて涙が止まらない。

他のみんなは平気そうなのに、どうして自分だけ......。人知れず、そんな悩みを抱えている人はいないだろうか。

人混みや騒音、光、触感、匂いなどの刺激に鋭く反応して動揺を抑えられない、相手の気持ちを敏感に察知しすぎて苦しい、といった反応は、実は異常でもなければ、レアケースでもない。

心理学者のエレイン・アーロンによれば、これは「敏感すぎる人=Highly Sensitive Person、略してHSP」の典型的な特徴。性格や「気の持ちよう」とは別次元の先天的な特性で、男女ともにおよそ5人に1人がHSPに該当するという。

アーロンが1996年にHSPの特徴をまとめた著書を出版すると、「まさに自分のこと!」「長年の悩みの原因が分かった」などという反響が相次いだ。

心理学者でライターとしても活躍するデボラ・ワードも、HSPという概念に出合って救われた1人。

カナダで育ち、現在はイギリスを拠点とする彼女は、幼い頃から敏感すぎる自分に劣等感を抱いてきたが、HSPについて学び、その特性を前向きにとらえられるようになったおかげで、徐々に自尊心を取り戻し、仕事も人間関係も好転したという。

そんな彼女が、HSP当事者としての体験を織り交ぜながら、最先端の研究成果を分かりやすく解説した新著『敏感すぎるあなたが生きやすくなるヒント』(井口景子・訳、CCCメディアハウス)が出版された。

11章からなるこの本には、HSPを理解するための基礎知識と共に、その特性とうまく付き合い、強みに変えるための処方箋がふんだんに盛り込まれている。

最善の方法は、泣いて、話をして、さらに泣くこと

ワードによれば、HSPが刺激に敏感に反応するのは、「周囲の環境から常に情報を吸い上げ、さらに他人の緊張や感情まで敏感に感じ取る」力が人一倍強いから。

おかげで、思いやりや共感力が高く、創造性に恵まれているといった特徴があるが、「強い刺激を浴びすぎると、濡れたスポンジがそれ以上水を吸い込めないように『いっぱいいっぱい』な気分」になり、疲れ切ってしまう。

しかも困ったことに、こうした心の動きは外からは見えにくく、HSP本人も不安や動揺を他人に悟られないように振る舞いがち。

その結果、周囲の人から「細かいことを気にしすぎ」「いちいち大げさに反応しないで」などといった否定的な言葉を浴びせられ、自己肯定感が損なわれていくケースが非常に多い。

ワード自身も子供時代から、自身の敏感さを押し殺して友達と同じように振る舞おうとしては失敗し、さらに落ち込むという経験を繰り返し、「自分はダメな人間だ」という思いを募らせていったという。 

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反発、一時5万1000円回復 AI

ワールド

豪貿易黒字、9月は25.6億米ドルに拡大 金輸出が

ワールド

アングル:米民主、重要選挙「全勝」で党勢回復に弾み

ワールド

マクロスコープ:高市「会議」にリフレ派続々、財務省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中