最新記事

株の基礎知識

初心者が知らない「株価が上がる」たったひとつの理由

2020年12月25日(金)14時40分
岡田禎子 ※株の窓口より転載

■ある日、買いたい人が増える理由

では、これを株に置き換えてみましょう。株は、期限のあるチケットと違って常に流通しています。したがって、株価が上がるということは、ある時点で、売りたい人の数よりも買いたい人の数が増えたということになります。「その株が欲しい」のは、実際には「いま、その株が欲しい」ということです。

それでは、なぜ買いたい人が増えるのでしょうか? たとえば、新しいスタイルのステーキチェーン店。立ち食いながら良質なお肉を手頃な値段で食べられるとあって、店の外に長い行列ができるほど繁盛しています。その様子を見た人は、「この会社はものすごく儲かっているぞ!」とピンと来ます。

企業は、利益の一部を配当金として株主に還元します。株を持っているだけでお金が入ってくるのですから、儲かっている会社の株は誰もが欲しがります。

しかし、株の数には限りがあります。同じようにピンと来た人が多いと、アイドルのコンサートチケットのような争奪戦が起きます。さらに、ニューヨークに出店するなどのニュースが流れると、誰もが「もっと儲かるに違いない!」と考えるようになって、その株に殺到。人気度は爆発し、株価は暴騰します。

ところで、このステーキチェーン店が実際に儲かっているかどうかは、ここでは問題ではありません。多くの人が「儲かるだろう」と考えるだけで、その会社の株は人気度が上がり、株価が上がります。

■実は、儲かっているかどうかは関係ない

その株を買おうとしている人の中には、「配当金が増えるかも」「株主優待が充実するかも」と思って株を保有したい人もいれば、「今のうちに買っておけば、世界展開して大儲けした際に株価はもっと上がるはず」というふうに将来を見据えている人もいます。

その一方で、「この株を欲しがる人はまだまだ増える。いまここで買って、ある程度、株価が上がったところですぐに売却すれば儲けになる」という思惑から買いに入る人もいます。

このように、その株を買いたい人の理由は様々です。誰もが同じように「儲けた分け前(配当金)」をもらおうとしているのではなく、各々がいろいろな連想をめぐらし、人それぞれの思惑を膨らませています。そもそも会社が儲かっているとは考えていないことも往々にしてあります。

ステーキチェーン店にしても、「人気は一時的なものに過ぎない」「ニューヨーク進出は失敗するだろう」と考える人も当然います。さらに、もっと安いときに株を手に入れておいたから「そろそろ売り時」と考える人もいるでしょう。つまり、売りたい人の理由も様々ということです。

いずれにしても、そうやって売りに出た株に対して、圧倒的に買いたい人の数が多いために、たとえ実際には儲かっていなくても、株価はどんどんつり上がっていくのです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

マクロスコープ:政府の成長戦略会議、分科会でも積極

ワールド

タイとカンボジア、戦闘継続 トランプ氏との電話協議

ワールド

フィリピン中銀、0.25%利下げ 予想通り

ビジネス

日経平均は続落、FOMC通過で出尽くし ソフトバン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 8
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中