最新記事

コロナストレス 長期化への処方箋

頭が痛いコロナ休校、でも親は「先生役」をしなくていい

DON’T PLAY A TEACHER

2020年8月19日(水)18時15分
エリザベス・ニューカンプ

宿題についてけんかするより家族の存続が大事 FLAMINGO IMAGES-SHUTTERSTOCK

<自宅学習の重荷を負う親のストレスのほうが何より危険。親が最優先に考えるべきことは、今までと変わらない。本誌「コロナストレス 長期化への処方箋」特集より>

コロナ禍で子供の学校が休校になった親たちは、自宅でどう教育すればいいのかと頭を抱えている。数学なんて教えられないし、子供が勉強についていけなくなるのは心配だ。何よりフルタイムで働いた上に子供の先生役まで求められるなんて――。
20200825issue_cover200.jpg
そう思っているのはあなただけではない。まずは、深呼吸をして。それから大声でこう言おう。「私は子供の先生ではない。私は親だ」

自分が一夜にして自宅学習の先生になった、と思うのは間違いだ。子供に読み書きや算数を教える責任は、今も学校にある。学校や先生たちは今、未知のコロナ禍に対応すべくベストを尽くしている。親たちは、パニックにならなくても大丈夫だ。

焦って自宅学習用の教材を買いに走らなくてもいいし、ネット動画で算数の教え方を探さなくてもいい。子供の毎日を学習時間でいっぱいにする必要もない。親が最優先に考えるべきことは、今までと同じ。子供が健康で幸せでいることだ。

子供は日課をこなしながら成長するものだが、今はそれがなくなってしまった。親としては、子供の脳が活発であり続けるための方法を提供してあげることが大事。学習の成果は、今は気にしなくていい。

子供たちが、いま世界で起きている事態を理解し対応できるように助けてあげるのが親の役目だ。親子にとってより大きなリスクは、親が子供の教育に全責任を持たねばならないと思い込み、多大なストレスを抱えることだろう。

親はまず、「子供の教育」という重荷を下ろすこと。今は子供に寄り添い、大きな愛とサポートを与える時だ。宿題について子供とけんかするのではなく、家族として存続し前進できる方法を考えたほうがいい。

そのためには、親とたっぷり過ごす時間は週末に限定し、平日はテレビやネット三昧をOKにするのもあり。私のように、子供がそばで暴れ回っているなかヘッドセットを着けて仕事をしていてもいい。こうした状況を含め、あらゆるやり方が、完璧な子育てだと考えられるべきだ。

もしこのコロナ禍で子供が予期せぬ状況にどう対処すべきか、カオス的な現状をどう生き抜けるかだけでも学べたとしたら、それはどんな本が教えることより大きい収穫だ。あなたは子供の先生ではないが、親なのだ。さあ、大きく息を吸ってみて。

©2020 The Slate Group

<2020年8月25日号「コロナストレス 長期化への処方箋」特集より>

【関連記事】ズーム疲れ、なぜ? 脳に負荷、面接やセミナーにも悪影響

20200825issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米大統領とイスラエル首相、ガザ計画の次の段階を協議

ワールド

中国軍、30日に台湾周辺で実弾射撃訓練 戦闘即応態

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、主力株の一角軟調

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中