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若者の現在と10年後の未来:働き方編(後編)──「不公平感の是正」に期待薄でも、女性ほど変革を求めている

2020年6月5日(金)16時16分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

20~50歳代全体では、現在と比べて10年後の未来は、テレワーク等の働く場所の多様化について、あてはまる割合が16.3%から45.6%(+29.3%pt)へと大きく伸びている(図表6(a))。また、仕事と育児の両立環境については、より進んだ状況として男性の育休取得と比較したが、10%ptも高くなっている。一方で、性年齢による不公平感の是正については、伸びているものの大きな違いはない。

若者でも、テレワーク等の「就労環境の整備」の面では同様だが、「不公平感の是正」についてはやや低下している(図表6(b))。つまり、若者では「就労環境の整備」は進むが、「不公平感の是正」は進むとは考えていない。

この背景には、前節で見たように、若者は「働き方改革」の理想と現実のギャップをやや大きく感じており、特に「不公平感の是正」について、その傾向が強かったことがあげられる。現在でもギャップを感じる中で、未来には期待しにくいということなのかもしれない。一方で、若者では現在の50歳代などと比べて、各段に「女性の活躍」や「年功序列より業績評価」が進んだ状況にある。よって、そもそも若者の持つ基準が全体と比べて高い影響もあるだろう。

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なお、若者について性年代別に見ると(図表略)、「就労環境の整備」では若者全体と同様だが、「不公平感の是正」では男女で違いがある。「不公平感の是正」のうち「女性の活躍」については、男性は進むとは考えていないが(あてはまる割合が未来の方が低いが)、女性は進むと考えている。一方、「年功序列より業績評価」については、男女とも進まないと考えている。

若者が「年功序列より業績評価」が進まないと考える理由は、現状で見られる難しさによるものだろうが、若い男性が「女性の活躍」が進まないと考える理由は、もしかしたら、女性の管理職登用で、これまで男性が占めていた管理職枠が減ることへの恐れなどによる、若い男性自身の願望なのかもしれない。

2|その他の未来──高年齢ほど、男性より女性で変化が進むと考える、革新を求めている?

このほか10年後の未来の働き方について、あてはまる割合を見たところ、全体で50%を超えているものは、「夫婦の働き方」の面では「高収入夫婦が増える一方、低収入夫婦も増えている」(60.9%)、「夫婦ともにフルタイム勤務が当たり前になっている」(53.5%)が、「柔軟な働き方」の面では「副業や兼業が、めずらしくなくなっている」(56.9%)が、そして、その他の面では「70代になっても大抵の人が働くようになっている」(55.7%)である。夫婦世帯間の経済格差は広がる一方、共働きや副業・兼業、高齢期の就労など、働き方の多様化という現在の流れは強まっていく様子がうかがえる。

若者では、全体と比べて全ての項目で、あてはまる割合が低いが、若者について性別に見ると(図表略)、全ての項目で女性が男性を上回る。また、若い女性では、おおむね全ての項目で全体をも上回る。なお、全体でも全ての項目で女性が男性を上回り、女性では年齢が高いほど、あてはまる割合が高い傾向がある。

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