最新記事

働き方

若者の現在と10年後の未来:働き方編(後編)──「不公平感の是正」に期待薄でも、女性ほど変革を求めている

2020年6月5日(金)16時16分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

女性は、結婚・出産後も仕事を続けていく意欲が高くなっている monzenmachi-iStock.

<コロナ後の意識変化を独自調査から読み解く。働く場所の多様化や副業・兼業が盛んになる一方で、「仕事と育児を両立できる制度」に対する満足度や性別による不公平感は根強い>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年4月20日付)からの転載です。
「若者の現在と10年後の未来:働き方編(前編)」はこちら

2|若者の状況──30代前半の女性は「女性活躍」、男性は「長時間労働の是正」で理想と現実のギャップ

次に、若者について見ると、「働き方改革」で望まれる項目も、望まれない項目も、全体と比べて、あてはまる割合がやや高い(図表4)。よって、若者では、「働き方改革」として進むべき方向と実態のギャップをやや強く感じている可能性がある。なお、若者では、特に「結局、長時間働ける人が評価されやすい」(+4.2%pt)や「残業の必要がなくても、終業時間の直後は帰りにくい」(+3.2%pt)、「年齢に関係なく、業績で公平に評価されている」(+3.0%pt)など、「不公平感の是正」や「長時間労働の是正」の面のうち、「働き方改革」で望まれない項目でやや高い傾向がある。

Nissei_career4.jpg

さらに、若者について性年代別に見ると、「不公平感の是正」については、30~34歳の女性で実感が薄く、依然として長時間働ける人が評価されているという認識が強い(図表5)。30代前半の女性は、まさに女性の活躍推進における管理職登用の対象となりつつある層だ。当事者であるがために、進むべき理想の姿と実態のギャップを大きく感じるのだろう。また、この層では「セクハラやパワハラなどを受けても告発しにくい」で、あてはまる割合が高いことも特徴的だ。組織における女性ならではの難しさを感じているということなのかもしれない。

「長時間労働の是正」の面では、30~34歳の男性で、会社からの帰りにくさや休暇の取りにくさを感じている。30代前半の男性は、「就労環境の整備」の面でも「仕事と育児を両立する制度が整っている」で、あてはまる割合が低い。30代前半は男性も管理職登用の対象となりつつある年代だ。また、男性は女性と比べて組織の序列を意識して動く傾向があるために、旧来型の価値観を持つ上司の動向を懸念しているという意識のあらわれなのかもしれない。

Nissei_career5.jpg

未来の職場環境──若者は就労環境整備や柔軟な働き方は進むと考えるが、評価制度は懐疑的?


1|現在と未来の比較──若者はテレワークや両立環境の整備は進むと考えるが、性年齢による不公平感の是正には懐疑的?

調査では、10年後、2030年に予想される職場環境についても15項目をあげてたずねている。まず、前節で見た現在の環境と比較可能な4項目について見ていきたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中