最新記事

投資の基礎知識

株価はどうなる? 決算発表前・直後・発表後にそれぞれすべきこと

2019年3月12日(火)06時35分
岡田禎子 ※株の窓口より転載

【決算発表後】最も売られやすい要因

決算発表後の株価は、決算が出てみなければわかりません。特に最も大きく売られるのは、今期の業績予想が投資家にとって期待外れの数字だった場合です。

失望が売りを呼んだファナック・ショック

2018年3月期、ファナック・ショックと呼ばれる動きがありました。ファナック<6954>の事前の市場コンセンサスは2479億円の増益予想でしたが、会社側が出した業績予想は1638億円の減益。あまりに保守的な会社側の業績予想は市場の失望を誘い、株価は大きく下落しました。

ファナックの株価推移[2018年4〜5月]

kabumado190312chart1.png

(Chart: TradingView

元々、ファナックはきわめて保守的な業績予想を出すことで知られている企業です。2018年3月期も、期初から数えて3回も上方修正を出しています。それでも投資家にとって期待外れの数字であれば、大きく売り込まれる原因となるのです。

(参考記事:決算発表で上がった銘柄・下がった銘柄【2018年3月期:ファナック、ZOZOほか】)

嵐に翻弄されないために

何度も述べたように、決算発表によって株価がどんな動きを見せるは予測できません。その理由のひとつとして、アナリストによる企業への事前取材が禁止されたことが挙げられます。

以前は、証券会社のアナリストが決算発表前の企業を取材し、それをもとにレポートを出していましたが(決算プレビュー)、2016年9月から全面的に禁止されました。事前に企業側の数字を株価に織り込めるケースが少なくなったことで、決算発表後の株価の振れ幅がますます大きくなっています。

例えば、トヨタ自動車<7203>の2018年3月期の決算発表は、異例の場中発表ということもあり、大きな注目を集めました。そこで発表された業績予想は、市場コンセンサスを上回るポジティブサプライズとなり、その日のうちに株価は大きく上昇しました。

トヨタ自動車の株価推移[2018年4〜5月]

kabumado190312chart2.png

(Chart: TradingView

トヨタのような日本を代表する大企業でさえ、決算発表によってこれだけの値動きが起こります。決算発表はニュースでも大きく取り上げられ、相場全体がそわそわするため、自分も流れに乗りたい!と思ってしまうかもしれませんが、その焦りが大きな落とし穴になることも少なくありません。

株価が落ち着くのは、決算発表を受けてアナリストたちが決算内容を精査し(決算レビュー)、業績予想の修正を行って市場コンセンサスを形成する数週間後となります。急激な値動きに一喜一憂することなく、嵐が来たら「不要不急の外出」は避けることが賢明と言えるでしょう。

[筆者]
岡田禎子(おかだ・さちこ)
証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。現在テレビ東京系で放送中のドラマ「インベスターZ」の脚本協力もしている。 日本証券アナリスト協会検定会員(CMA) ファイナンシャル・プランナー(CFP ®)

※当記事は「株の窓口」の提供記事です
kabumado_logo200new.jpg

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

COP30が閉幕、災害対策資金3倍に 脱化石燃料に

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中