日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?

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<全樹脂電池の開発製造を手掛けるAPB社の機微情報が中国に流出したという疑惑の背景には、日本における「企業インテリジェンス」の不足という問題がある>
2025年2月、国会で国費が投入された事業に産業スパイの疑惑があると議論されて大きな話題になった。
ここで話題になったのは、次世代リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発製造を手掛ける技術系ベンチャーのAPB社だ。同社は、全樹脂電池の量産化を目指していたが、経営体制の混乱や量産化の停滞で、最終的には資金繰りが悪化し、2025年4月には自己破産を申請している。
APB自身に経営や開発などで問題が生じる中で、中国の電子機器大手企業と繋がりが指摘される人物や、福岡県の企業が経営に関与するようになり、同社が「乗っ取られた」といった疑惑まで取り沙汰された。さらに国会質問やメディアによって、日本の次世代潜水艦に搭載が検討され、政府の助成金が投入されていた全樹脂電池の技術が中国に盗まれた──というセンセーショナルな話にもなった。
ところが、実際にはAPBの開発力や技術力が不十分だったことは否めない。量産化技術なるものはまだ存在しない状態で倒産していることも事実だ。そうなると、そもそも、福岡県の企業も投資話に乗せられた被害者と言えるかもしれない。