最新記事
ビジネス

テレビ・映画に加え、「第3次ストリーミング戦争」でネット配信も不調...ハリウッドに「大収縮」の危機

2024年2月12日(月)12時38分
ロイター

<「スーパーヒーロー疲れ」>

映画産業では、かつてはヒットが確実視されたフォーマットでも興行収入が振るわなくなっており、やはり存亡に関わる危機を抱えている。あるベテランの製作スタジオトップは、ここ数年「スーパーヒーロー疲れ」という言葉をよく聞くという。それが顕著に表面化したのが昨年で、「マーベルズ」「シャザム!―神々の怒り―」「ザ・フラッシュ」など、巨額の予算にもかかわらずヒットせずに期待を裏切る作品が相次いだ。

その反動として映画会社は、数少ない野心的な企画、たとえば「オッペンハイマー」や「バービー」といった規模の、文化的・興行的影響のある作品を生み出す可能性にフォーカスしていくというのが業界関係者の観測だ。両作品とも、実績のあるシリーズ作品が低迷する中で、2023年の興行成績を下支えするのに貢献した。

近年で最大のヒット作の1つに関わった映画会社幹部は、「スペクタクルが必要だ」と語る。「映画館で公開されているうちに見なければ、という雰囲気が欲しい。自宅で見ても変わらないのであれば、大作にはゴーサインを出せない」

TDコーエンによれば、観客は大音量の超大作以外は、ストリーミングサービスでの鑑賞を好む。2022年の上位100作品では、その興行収入全体の56%を、わずか19本のアクション・冒険映画が稼ぎ出した。こうした興奮度の高い作品を除けば、持続可能な回復は見込めないとTDコーエンは指摘する。

投資家でもあるもう1人の経験豊富なメディア企業幹部は、こうなれば映画産業はさらに縮小すると述べ、公開される映画が少なすぎて、全米の3万9000カ所もの映画館を維持することが正当化できなくなると警告する。TDコーエンの見方も同じだ。このメディア企業幹部は、映画館ビジネスは「危機にひんしている」と話した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、デジタル元の国際利用促進へ 多極通貨システム

ワールド

シンガポール成長率予想下振れ、追加緩和実施へ=MA

ワールド

タイ輸出、5月は前年比+18.4% 関税交渉期限に

ワールド

北朝鮮の金氏、ロシア安保会議書記と会談 「特別軍事
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火...世界遺産の火山がもたらした被害は?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    【クイズ】「熱中症」は英語で何という?
  • 10
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中