最新記事
日本企業

ヤマハとカワイ...「日本製ピアノ」が世界の舞台で愛される理由とは?

A Musical Journey Through Time

2023年7月14日(金)14時50分
本間ひろむ(批評家)
ブルース・リウ,ファツィオリ

21年のショパンコンクールでは、イタリアの新興メーカーであるファツィオリのピアノを弾いたブルース・リウが優勝した NIFC GRZEDZINSKI

<世界の名だたるピアノメーカーの主戦場に日本のヤマハとカワイも挑む。2人の創業者のDNAを引き継ぐピアノが、世界のコンクールと家庭でその音色を響かせるまで>

日本人にとって、昔から身近な楽器であるピアノ。そのピアノが近年、世界で進化を続けている。中でも大きな位置を占めるのが日本の二大メーカーだ。

ピアノの歴史をひもとくと、ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生きた17~18世紀には現在のようなピアノは存在せず、オルガンやチェンバロしかなかった。

本格的にピアノで作曲をする音楽家、例えばフランツ・シューベルトなどが登場するのは19世紀になってからだ。

19世紀当時、ウィーン周辺にはピアノ工房が林立していて、さながらカオス状態だった。そんな中からオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世によって「宮廷および会議所御用達のピアノ製造業者」に選ばれたのがオーストリア製のベーゼンドルファーである。

それまでお上品なフランス製ピアノのプレイエルをリサイタルで弾いてはひと晩で壊していたフランツ・リスト(激しい演奏スタイルが人気だった)が、このピアノは壊れないと絶賛したのがベーゼンドルファーだった。

これに対し、いやいや、ピアノは深い響きとオーケストラのような表現力が大事だろうとフランスの作曲家クロード・ドビュッシーに絶賛されたのが、ドイツ製のピアノ、ベヒシュタインである。

一方、19世紀にドイツ出身の職人が新天地アメリカに渡り、ニューヨークで設立したピアノメーカー、スタインウェイ&サンズは、20世紀初頭にある戦略に活路を見いだした。

ドイツにも拠点を設ける一方(現在もニューヨークとハンブルクに工場を持つ)、セルゲイ・ラフマニノフやアルトゥール・ルービンシュタインといったビッグネームの演奏家・作曲家に楽器を提供。ブランドの付加価値を高め、販路を広げるという戦略だ。

コンサートやリサイタルでスタインウェイしか使用しない彼らはスタインウェイ・アーティストと呼ばれ、ウラディーミル・ホロヴィッツ、グレン・グールド、マルタ・アルゲリッチといったそうそうたる顔触れが仲間に加わった。

きらびやかな音色と高いスペックを備えたスタインウェイのピアノは彼らと共に成長した。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

農林中金、4ー9月期の純利益846億円 通期見通し

ビジネス

午後3時のドルは155円前半、財務相・日銀総裁会談

ビジネス

日経平均は4日続落、米エヌビディア決算控え売買交錯

ワールド

ウクライナ西部で爆発、ロシアがミサイル・無人機攻撃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中