最新記事
経営

育休の欠員をどうカバーする? 「助成金を使う」という手もある

2023年4月14日(金)11時40分
加藤知美 ※経営ノウハウの泉より転載

■4:負荷がかかる社員のケアを忘れない

家庭と仕事の両立に励む社員がいる一方で、独身や子供をもたない社員には、欠員の負担のしわ寄せがきやすいことを忘れてはいけません。特定の社員への負荷が大きくなると、「独身は損している」といった不満や、育休を取得する社員へのマタニティーハラスメント(マタハラ)につながる恐れもあります。面談時ではこの視点から業務量についてヒアリングをしたり、頑張りを評価等に反映したりと、メンタルや待遇面で配慮するようにしましょう。

復職する社員の取り扱いの注意点

育児休業を取得する社員は、これまでの仕事生活とは全く異なる環境に置かれながら生活をしている状況になります。したがって、復職する際にはさまざまな不安を抱えたり、復職後も育児休業取得前のようなペースで業務をこなすことができず、悩んだりするケースが考えられるでしょう。このような状況を防ぎ、復職した社員が安心して働くことができるようにするためにも、以下の点を心がけましょう。

■1:育休中の社員とコミュニケーションをとる

会社側は社員が育児休業を取得している時期から、積極的にコミュニケーションを取っておくことが重要です。定期的に会社の状況や社内異動や入社・退社情報などを知らせることで、社員は自分が忘れられていないということを実感することができるでしょう。

また、育児休業を取得中に、今後のスキルアップのために何らかの資格を取得したいという考えを持つ社員も中にはみられます。このような場合に対応するため、教育プログラムの紹介やOA機器を貸し出す制度を組み込む方法も有効となるはずです。昨今ではコロナ禍の影響もあり、在宅でさまざまなスキルアップをするための取組みが実施されていますので、会社の業態や規模に応じて、最新のスキルアッププログラムを調べておくとよいでしょう。

■2:復職前に希望の働き方をヒアリングする

実際に社員の復帰が迫って来た時期には、復帰後の働き方について事前に話し合う必要があります。意見の相違がないよう、メールやSNSではなく、直接・オンラインによる面談を実施し、互いの顔が見えるような状況で話し合うことでトラブルを防ぐことができるでしょう。

育児休業前とは社員が抱える状況が変わっていることもあるため、会社側では今後実際に職場復帰をした際に希望する働き方をヒアリングし、社員が無理なく業務を進めることができるような配慮を行う必要があります。

復職前とは部署を異動させた方が良いのか、業務内容はどうするか、短時間勤務の希望や残業を希望しない旨の申し出があるか否かを、一つずつ丁寧に確認していきましょう。

■3:復職後の労働条件や働き方に注意する

育児休業から復帰した社員を本人の意思に反して降格させたり、給料額を減らしたりすることは労働条件の不利益変更とみなされ、トラブルにつながる恐れがあります。また、3歳に満たない子供をもつ社員が要望した場合、会社は所定労働時間を超えて労働させてはいけないと育児・介護休業法で定められていますので、希望があれば対応が必要です。復帰後の社員に認められている権利についても把握しておくことで、復職後の社員が安心して働けるようにしましょう。

まとめ

社員が安心して育児休業を取得し、復帰できるような環境を整えるためには、会社が常日頃から社内の業務内容を把握し、常に効率化を考えた業務フローを整えておく必要があります。特に社員の残業が常態化している職場の場合、欠員が一人生じただけで周囲の社員にはかなりのダメージが与えられる危険性があります。社員一人ひとりの業務内容が適正かどうかを見直し、職場のモチベーションが低下しないような対応策が求められるでしょう。

【参考】
『両立支援等助成金』/ 厚生労働省

[執筆者]
加藤知美
エスプリーメ社労士事務所 社会保険労務士
愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に個人事務所を設立。総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。

2021.11.24

※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です
keieiknowhow_logo200.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユーロ相場が安定し経済に悪影響与えないよう望む=E

ビジネス

米製薬メルク、肺疾患治療薬の英ベローナを買収 10

ワールド

トランプ氏のモスクワ爆撃発言報道、ロシア大統領府「

ワールド

ロシアが無人機728機でウクライナ攻撃、米の兵器追
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中