最新記事

欧州

ドイツを襲うロシアの天然ガス供給中止 広がる企業倒産の波

2022年9月26日(月)10時17分
空になった独ベルリンの店舗

ドイツのデュッセルドルフを拠点にトイレットペーパーを製造するハクレは1928年創業の老舗企業だ。それが今年夏のガス料金高騰で、あっさり倒産してしまった。写真は空になった独ベルリンの店舗。2021年3月撮影(2022年 ロイター/Hannibal Hanschke)

ドイツのデュッセルドルフを拠点にトイレットペーパーを製造するハクレは1928年創業の老舗企業だ。それが今年夏のガス料金高騰で、あっさり倒産してしまった。

ロシアが欧州への天然ガス供給を中止したことで、ハクレのようなエネルギー集約型産業は特に大打撃を被っている。

「あっという間の出来事だった。電気とガスの料金が爆発的に上昇し、とてもではないが顧客に転嫁するのが追い付かなかった」とハクレのマーケティング責任者、カレン・ユング氏はロイターに語った。

8月以降、同社のように債務超過に陥る企業が急増し、欧州一の経済大国ドイツを倒産の大波が襲うのではないかとの恐れが広がっている。

ガス料金の高騰、数十年ぶりのインフレ、リセッション(景気後退)の恐れ、冬の燃料不足といったリスクから国民を守ろうと尽力するショルツ政権に、企業倒産という重圧が加わった格好だ。

ドイツの8月のエネルギー価格は前年同月比139%上昇した。

ハーベック副首相兼経済・気候保護相は今月のテレビインタビューで、生活に苦しむ顧客が商品を買わなくなったからといって企業が必ずしも倒産するわけではない、と発言して炎上した。

政府は企業支援策に数百億ユーロを投じており、国内最大のロシア産ガス輸入企業であるウニパーについては救済に乗り出した。

しかしハクレは、自社のような「ミッテルシュタント」への保護拡大を訴える。ミッテルシュタントは多くが家族経営の中小企業で、ドイツ経済のエンジン役を果たしてきた。

「システム全体に影響を与える巨大企業を見守り、解決策を探すことはもちろん重要だ」とハクレのユング氏。「しかしドイツの雇用の大部分をミッテルシュタントが担っているのも事実であり、そのわれわれが真に解決策を必要としている。ミッテルシュタントが未来もこのドイツで生き残れるように」と語った。

こうした懸念に応え、ハーベック経済相は中小企業への支援拡大を約束。ブッシュマン法相はエネルギー高に苦しむ企業を支えるため、債務超過基準の緩和を計画している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンドのレバレッジ、5年ぶり高水準=ゴール

ビジネス

英PMI、6月は予想以上に改善 雇用削減と地政学リ

ビジネス

アングル:三菱重工、伝統企業が「グロース」化 防衛

ワールド

アングル:イラン核開発、米軍爆撃でも知識は破壊でき
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中