最新記事

サプライチェーン

中国の軍事演習で一部貨物船が台湾迂回 有事のサプライチェーン・リスク浮き彫りに

2022年8月5日(金)17時33分
北京の街頭でモニターに映し出された軍事演習の映像

中国が台湾周辺で軍事演習を実施していることを受けて、一部の貨物船や石油タンカーが台湾を迂回して航行している。写真は北京の街中で、モニターに映し出されたニュースの映像。2日撮影(2022年 ロイター/Tingshu Wang)

中国台湾周辺で軍事演習を実施していることを受けて、一部の貨物船や石油タンカーが台湾を迂回して航行している。

台湾海峡や台湾東部の海域は東アジアから欧米に貨物を輸送する重要な航路。台湾の港は通常通り操業しているが、アナリストや船主によると、台湾の迂回で約半日の遅れが出ており、台湾有事の際に世界の物流が混乱するリスクが浮き彫りになっている。

国際海運団体BIMCOのチーフエコノミスト、ニールズ・ラスムセン氏は「一部の船舶は用心のため、台湾海峡ではなく、台湾東部の海域を航行している」と指摘。

情報会社フレイトスのツビ・シュライバー最高経営責任者(CEO)は「現時点で大きな混乱は見られないが、長期化すれば混乱を招く恐れが確実にある」とし「地域紛争が発生して航路の変更を迫られれば、通過に時間がかかり、日程が狂い、一段の遅延とコストが発生する」と述べた。

海運リスク管理会社ブレーマーのリサーチ責任者アヌープ・シン氏によると、大型石油タンカーの船主は警戒レベルを上げて航路を変更しており、海上保険会社も台湾周辺の航行に注意を呼びかけている。

海運業界は、新型コロナウイルス流行に伴うロックダウン(都市封鎖)の影響からまだ完全に回復しておらず、アナリストはわずかな遅れでも懸念されると指摘。

海上運賃情報プラットフォームを運営するゼネタのチーフアナリスト、ピーター・サンド氏は「貿易の促進ではなく、緊張の回避が優先されている。サプライチェーンの問題が悪化することを意味する」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中貿易協議で大きな進展とベセント長官、12日に詳

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 3
    「隠れ糖分」による「うつ」に要注意...男性が女性よりも気を付けなくてはならない理由とは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 8
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中