最新記事

日本経済

訪日観光客受け入れ、ゆっくりと再開 入り混じる期待と不安

2022年5月31日(火)10時43分
浅草・仲見世通りを歩く人びと

日本がおよそ2年ぶりにインバウンド、訪日外国人観光客の受け入れを解禁する。写真は浅草で2020年10月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

日本がおよそ2年ぶりにインバウンド、訪日外国人観光客の受け入れを解禁する。観光業界からの要望や、水際対策の緩和を進める世界的な潮流に背中を押された形だが、新型コロナウイルス感染再拡大にもつながりかねず、参議院選挙を控えて世論に敏感な岸田文雄政権は入国者数を1日2万人に限定する。本格的な再開にはなお時間がかかりそうで、成長戦略として政府が今も掲げる2030年までに年間6000万人という目標の達成は遠い。

緩慢だった政府の動き

東京スカイツリーを眺めながら隅田川沿いや雷門前を走る浅草の観光名物、人力車もこの2年は厳しい毎日だった。コロナ前は平日や閑散期を中心に外国人が主要客の一部だったが、流行が始まってからは激減。「数少ない地方からの観光客に対して、なんとかやってきていた」と、人力車を使った観光案内事業を手掛けるライズアップの及川唯・統括責任者は言う。今年に入って国内の観光客が増え始めたというが、「浅草の町に外国人が早く戻ってきてほしい。そのほうがにぎやか。いろいろな国の方が、浅草寺でお参りして、お酒飲んで、というのが浅草らしい良い景色だった」と及川氏は語る。

日本は6月1日から1日当たりの入国者数を1万人から2万人へ引き上げる。10日からは添乗員付きパッケージツアーを対象に外国人観光客の受け入れを再開する。コロナ禍に苦しんできた観光業界にとって、インバウンドの再開は長く待ち望んだ決断だった。日本旅行業協会(JATA)の高橋広行会長(JTB会長)は5月27日、「国際交流の再開に向け大きく前進した」と歓迎した。

ピークの2019年に3188万人まで拡大した訪日外国人観光客は、21年には25万人へと一気に落ち込んだ。彼らが日本で消費する金額も4兆8135億円から1208億円に激減した。JATAは政府や与党に入国制限緩和に向けた要望を10回以上提出したが、ある観光会社の役員は「(政府の)動きは鈍かった」と語る。

厳しい水際対策を取った岸田政権下、コロナの感染者は減少傾向が続いた。参院選が今夏に近づく中、マスク着用などコロナ対策への意識が異なる外国人が入国して感染が再拡大しかねないことを懸念していたようだと、この役員は陳情を続ける中で受けた感触を振り返る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テマセク、運用資産が過去最高 米国リスクは峠越えた

ワールド

マレーシア、対米関税交渉で「レッドライン」は越えず

ビジネス

工作機械受注、6月は0.5%減、9カ月ぶりマイナス

ビジネス

米製薬メルク、英ベローナ買収で合意間近 100億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中