最新記事

経済制裁

ビットコインによるロシアの制裁逃れを防げ 日本も対策、課題は国際連携

2022年5月21日(土)10時07分

ウクライナ侵攻に伴う対ロシア経済制裁で、暗号資産が「抜け道」になるのを防ぐため、日本では官民挙げて取り組みを進めている。写真は暗号資産のイメージ。17日撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

ウクライナ侵攻に伴う対ロシア経済制裁で、暗号資産が「抜け道」になるのを防ぐため、日本では官民挙げて取り組みを進めている。政府は関連する法律を成立させ、業界団体も資金洗浄(マネーロンダリング)防止策を強化させてきた経験から、対策に自信をのぞかせる。一方、暗号資産の取引は国境がないため、制裁の実効性確保には国際組織によるルール作りが望ましいとの指摘が有識者から出ている。

主要7カ国(G7)と欧州連合(EU)は3月、対ロシア制裁を巡り、暗号資産の送金規制で合意した。これを受け日本では、関連する改正外為法の準備を進め、今国会で4月20日に成立、今月10日に施行された。暗号資産交換業者に対し、ユーザーが暗号資産を送る場合に送り先が制裁対象者に当たらないか、確認を義務づけることが柱だ。

岸田文雄首相が3月下旬に法改正に言及して以降、財務省は頻繁に交換業者への説明会を開き、業者の理解と対応の強化を求めてきた。その結果、交換業者は外部のブロックチェーン解析業者を通じて暗号資産の送付先のアドレスが制裁対象者に該当しないか確認していくことになった。

交換業者、制裁逃れ阻止に自信

暗号資産業界の自主規制団体、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の蓮尾聡会長(コインチェック社長)は、改正外為法について「事業者の規模にかかわらず一律に適用されるものでもあり、まずはミニマムのスタンダードを作りに行くルールだ」と指摘。外部のブロックチェーン解析業者を通じたアドレスの監視は「暗号資産を取り巻くAML(マネロン対策)に関する不信感を取り除く意味で最初の一歩だと思う」と話す。

業界としての対応が外部のブロックチェーン解析業者を利用することになったことで、規模の小さい交換業者にとっては自前でアドレスの「ブラックリスト」を作成して整備するコストが要らなくなった面がある。

「マネロン対策と今回の制裁対応は異なる」(金融庁幹部)ものの、マネロン対策に取り組んできた経験が生かされるとの見方もある。

暗号資産業界はウクライナ危機前から、マネロン防止対策の向上に取り組んできた。4月からは、暗号資産送付時に送り主と送付先双方の情報を明らかにして共有する「トラベルルール」の一部を自主規制としてスタート。ユーザーに対して、暗号資産の受取人の氏名などを申告することを義務づけた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ビジネス

午前の日経平均は小反発、クリスマスで薄商い 値幅1

ビジネス

米当局が欠陥調査、テスラ「モデル3」の緊急ドアロッ

ワールド

米東部4州の知事、洋上風力発電事業停止の撤回求める
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中