最新記事

株の基礎知識

【ゼロから分かる】「円安=株高」が崩れたのはなぜ?

2022年4月22日(金)13時40分
山下耕太郎 ※かぶまどより転載

Floaria Bicher-iStock.

<かつては「円安=株高」という構造があったが、近年はその相関が見られなくなっている。円安が急速に進んでいる今だからおさらいしておきたい、為替と株価の関係>

為替と株式市場の関係

為替レートは輸出企業や輸入企業の株価に影響を与えます。輸出企業を考えた場合、円安・ドル高になれば、業績にとってプラスの要因になるからです。

たとえば、自動車1台を2万ドル(米ドル建て)で輸出した場合、1ドル=110円のときと1ドル=90円のときでは、受け取る外貨は同じでも、円ベースでの価値は異なります。

・1ドル=110円のとき:売上 220万円(2万ドル×110円)
・1ドル=90円のとき:売上 180万円(2万ドル×90円)

一方、ガスや電力・化学などの輸入企業は、円高・ドル安になれば支払うコストが円ベースで低下するので、円高のほうが業績にとってプラスになります。

円安=株高の構図が崩れた理由

為替と株価の関係を考えるとき、「円安=株高」という説明をよく耳にします。

日本には自動車などの輸出企業が多く、円安になれば企業業績が向上し、株価も上がるという経験則があります。とくに2012年に始まったアベノミクス以降、円安により日本企業の輸出が増え、業績が改善するとの期待で日本の株高につながりました。

しかし、実際は輸出数量が増えず、市場では「円安=株高」という構図が崩れてきているのです。その背景にあるのが、日本企業の生産体制の変化です。2000年代まで、家電などは国内生産が中心で、円安になれば海外向け製品を値下げして、輸出数量を増やすことができました。

しかし2010年代以降、半導体製造装置や画像センサーなど、高付加価値の受注生産が中心になりました。そのため、価格よりも性能が重視され、安ければ多く売れるわけではなくなったのです。

■輸出の為替感応度は「ゼロ」に

円相場の変動が日本の輸出全体にどう影響しているかを表す「輸出の為替感応度」というものがあります。日銀の分析によると、2000年代半ばは、米ドルに対して10%円高になると、輸出は3%程度減っていました。

ところが、2017年にはほぼ0%となり、円安・円高と輸出の増減はほぼ無関係になったのです。黒田総裁も2021年10月の記者会見で、「円安で輸出が増加する度合いは、以前よりも低下している」と述べています。

(参考記事)【株初心者が絶対に読むべき7選】株式市場で不動産が買える「REIT」とは...

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税

ワールド

イラン産石油購入者に「二次的制裁」、トランプ氏が警

ワールド

トランプ氏、2日に26年度予算公表=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中