最新記事
ビジネス

「課金したい」と思わせるブランドストーリーの肝は、「弱さ」の見せ方にあり

2022年4月19日(火)17時18分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

BRAND STORYTELLING
 ブランドストーリーのつくりかた

 ミリ・ロドリゲス 著
 ローリングホフ 育未 翻訳
 CCCメディアハウス

 (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

それだけでなく、聴覚、嗅覚、触覚、そして運動皮質も「むかしむかし(once upon a time)......」というフレーズを聞いた瞬間に活性化される。つまり、ストーリーをうまく伝えることができれば、オーディエンスの体中の感覚を目覚めさせ、ストーリーにのめり込ませられるということだ。まるでオーディエンス自身が、ストーリーの主人公やほかの登場人物であるかのように。

マーケターであれば、顧客が何かを買うときに下す判断は必ずしも理性的でないことを知っているだろう。感情的な決断がまずあり、それを理論で正当化しようとする。ストーリーテリングは、他のコミュニケーション方法と比べて、感情とコンテンツについての情報をつなぎ合わせることに長けているのだ。

さらに、オーディエンスの注意を引き付け続けられるのもストーリーテリングの強みである。 ストーリーはオキシトシンやコルチゾールなどの神経情報伝達物質を放出させ、身体を緊張させて受け手の集中力を高める。データや数字などのドライで退屈な情報を提示するときでも、ストーリーを使えば受け手を惹きつけることができる可能性が高くなる。

社会的な生物である私たちにとって、ストーリーは認知的コミュニケーションの道具である。他者に働きかけ、関係を築こうとするとき本能的に使っているからだ。家族や友達、知り合い、同僚たちには自然と使っているはずだ。ではどうして、この効率的なメカニズムをビジネスの場面で使うことが難しいのか。

ミリ・ロドリゲスは、その解決策として、デザイン思考と成長型マインドセット(成長する人に共通する思考の特徴)に根差したストーリーテリングの方法を提示している。

ストーリーテリングにおけるデザイン思考の最初のフェーズでは、ターゲット・オーディエンスについて、共感をもって理解を深めることが大切だ。共感こそ、オーディエンスに感じてほしい気持ちを引き起こすための大切な鍵だからだ。

ビジネスの土台となるブランドストーリーの目的は、オーディエンスになぜその企業が存在するのか、存在意義を示すためにある。 幸せ、エンパワメント、ひらめき、羞恥心、悲しみ、喪失──。このような感情はすべて誰しもが抱えるものだが、もしブランドストーリーがビジネスの機能全域にこういったテーマを戦略的に広げることができれば、オーディエンスとつながりを持ち、そのつながりを持続することが可能になる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却承認 ハイマースなど過去最大の

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中