最新記事

ビジネス

ラグビー「リーグワン」で初年度にチーム再編や廃部が続く理由

2022年4月11日(月)18時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

miake-WildKnights220411.JPG

ワイルドナイツ、ホームでトライを喜ぶ Courtesy for Michinori Miake

「事業運営費のほとんどは人件費」

所属チームの「親会社頼み」から自立的・自律的な経営への脱却が、リーグワンの目標だ。2020年1月、日本ラグビーフットボール協会ラグビー新リーグ法人準備室の谷口真由美室長(当時)は、「新リーグに関する参入要件の骨子について」という文書を公表した。参加を希望するチームに課された「ハードル」だが、そこにはこう書かれている。

■各参加団体は事業機能を持つこと。
■事業機能とは、チーム運営・収益事業すべての責任者となる事業責任者の設置、収支の透明化、主催興行(収益事業)体制の整備を言う。
■1部リーグは、1試合当たり15000人の観客動員を目指す。

ラグビーのトップチームは年間で最低でも約10億円の事業運営費がかかるとされる。あるトップチーム関係者は言う。「ほとんどが人件費。外国人有力選手10人と外国人監督で5億円から6億円かかる。さらに選手を40人から50人保有すると合計15億円近くになる」

NTTの新チームは25億円の資本金でNTTが20%、NTTドコモとNTTコミュニケーションズが各40%を出資する。この金額についてNTTドコモ広報部は「単純に2チーム分の運営費を足したものではない。新チームとレッドハリケーンズ、両方の事業規模は現在、検討中」と説明する。

現在リーグワンで2位、最後のトップリーグ王者である埼玉パナソニックワイルドナイツは、4月1日から分社化されたパナソニックスポーツ株式会社の傘下に入った。飯島均ゼネラルマネージャーは話す。「企業スポーツなので毎年の予算規模は会社から『前年比何%増、何%減』で示される。我々はその中でやりくりするしかない」

ワイルドナイツの初年度の事業見通しは20億円近い。ホームゲームが年8試合でチケット収入は年間5億円前後が目標だ。一方で、ホームゲームを主催するとイベント、警備、グッズ販売などに様々な運営コストもかかる。3年後の事業規模は30億円を目標とするが、自前の興行収入は6億円で、残り24億円の半分をスポンサーなどの外部収入、半分を親会社であるパナソニックが負担する見込みだ。

ワイルドナイツのようなリーグ内でも比較的大きな事業規模、そして好成績を誇る「優等生」でも、まだ事業総額の25%程度しか自前で稼ぐことができていない。観客増が不可欠だが、コロナ渦の影響で現段階のD1平均観客数(第12節終了時点)3876人にとどまっている。昨年度、前身である最後のトップリーグの平均観客数3425人を上回っているものの、リーグ目標である1万5000人には遠い。同じコロナ禍に苦しみながら、サッカーのJリーグのJ1各チームは現在、軒並み1万人以上の観客数を実現している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、不法滞在者の送還拡大に言及 「全リソー

ビジネス

焦点:日鉄、巨額投資早期に回収か トランプ米政権の

ビジネス

香港取引所、東南アジア・中東企業の誘致目指す=CE

ワールド

米ミネソタ州議員射殺事件、容疑者なお逃走中 標的リ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中