最新記事

ビジネス

ラグビー「リーグワン」で初年度にチーム再編や廃部が続く理由

2022年4月11日(月)18時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ラグビー

熊谷ラグビー場をファンが埋める。ただし観客数は目標にはまだ遠い Courtesy for Michinori Miake

<1月に開幕したばかりの日本ラグビー「リーグワン」で、チームの再編や廃部が続いている。チーム経営の自立と選手のレベルアップを目指して始まった新リーグに何が起きているのか。そもそも、ラグビーのトップチーム運営にはどれぐらいカネがかかるのか>

2019年のラグビーワールドカップでの日本代表の躍進を経て、さらなるブームを巻き起こそうと2022年1月に開幕したばかりのラグビー「リーグワン」で、チームの再編や事実上の廃部が立て続けに起きている。日本代表選手と世界のトップレベルの外国人選手による接戦によって日本ラグビーの底上げを図りつつ、今まで企業頼みだったチームに自立性と自律性を育てる目的で始まったリーグに何が起きているのか。

トップカテゴリーのディビジョン(D1)に参加する日本電信電話(NTT)系2チーム、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪と、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安の再編が公表されたのは3月16日だった。両チームは今年7月を目途にラグビー関連の新しい事業運営会社を設立。新会社が運営するチームは千葉県浦安市に拠点を置き、D1で優勝を目指せるチームとして強化する。レッドハリケーンズはNTTドコモ社員をメンバーとし、規模を縮小してこれまで通り大阪市で地域貢献やラグビー普及に取り組むという。

今年1月のNTTドコモによるNTTコミュニケーションズの子会社化を契機に、チーム運営のあり方を検討してきた。申請を受けたリーグワン事務局は、シャイニングアークスが来季も継続して参加することを承認。レッドハリケーンズは改めてリーグによって再審査され、来季はD3へ降格する予定だ。

「浦安にヒト、モノ、カネが集まる。大阪は縮小」という情報が、特にレッドハリケーンズのファンを落胆させている。チーム運営を任されるレッドハリケーンズの下沖正博ゼネラルマネージャーはこう話す。「新チームは発表通り全く新しくなる。浦安のチームが主体になるわけではない」

シャイニングアークスのクラブキャプテンを務める金正奎は、再編発表直後の試合の会見で「(2チームは)お互いに、今も切磋琢磨し合い高め合っています。このメンバーでできる喜びをかみしめて準備している」と語った。しかしレッドハリケーンズの選手からはこんな本音も漏れる。「選手同士で戸惑いや不安を話しています。日本代表など上を目指している選手は、新チームでプレーすることを望んでいる」。もちろん、すべての選手がD1の新チームに行けるわけではない。

新リーグは開幕から逆風に見舞われてきた。新しくなった国立競技場で1月7日に行われるはずだった開幕戦は、対戦予定のチームにコロナ陽性者が発生して中止。D1は4月9日までの12節72試合中、約20%に当たる15試合がコロナ陽性者発生を理由に中止された。

新型コロナでイベントが中止になること自体はラグビー以外でも起きている。しかし、リーグワンの試合を主催するのはホームチームだ。チケットの販売から会場設定、試合の実施までを担い、中止は即売上なしを意味する。チケット代返金の事務作業もチームにのしかかる。

さらに3月30日、D3の宗像サニックスブルースが今季限りで活動休止することを正式に発表した。事実上の廃部だ。母体企業のサニックスは2月14日、2022年3月期連結通算業績が28億円の最終赤字になると発表していた。94年創部。リーグワンの前身であるトップリーグに所属し、09−10年シーズンには過去最高の7位という成績を収め、福岡エリアで愛されてきたチームでもある。「経営危機を受けての判断」だと、ブルースのあるOBは明かす。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、政策決定で政府の金利コスト考慮しない=パウ

ビジネス

メルセデスが米にEV納入一時停止、新モデルを値下げ

ビジネス

英アーム、内製半導体開発へ投資拡大 7─9月利益見

ワールド

銅に8月1日から50%関税、トランプ氏署名 対象限
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 5
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 6
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中