「対面」復活を急ぐカンファレンス業界 環境負荷対策が課題に
コロナ禍による2年近い制限を経て、つながりを取り戻すことを人々は強く求めている。1月に開催されたCESの復活はオミクロン株に水を差された格好だが、この感染力の高い変異株の感染が全世界的に急増している中で、開催地ラスベガスに直接足を運んだ人は4万人を超えた。
コロナ禍に襲われる前年の2019年には、17万5000人以上が来場した。
オンラインでのカンファレンスの方がよりインクルーシブ(包括的)で参加しやすいものになる可能性がある。参加費も安く、アクセスも容易だからだ。だが時には、合意形成を図る上で直接対面することが不可欠な場合もある。
英国で活動する複数の市民団体による組織である「COP26コアリション」は、昨年のCOP26をリアルで開催することは、開発途上国の声を十分に反映させるための唯一の手段だった、と指摘する。
「もちろん、こうしたカンファレンスのカーボンフットプリントはできるだけ低く抑えるべきだ。だがグローバルな経済や課題を考えるうえでは、(オンライン開催といった)他の選択肢は好ましくないと考えている」と語るのは、COP26コアリション代表のアサド・レーマン氏。
グラスゴーで開催されたCOP26には多くの国から約4万人の代表団が参加した。2週間にわたる同イベントでは、会場で使われた1万5000平方メートルものカーペットが会議後に寄付されたほか、参加者への飲料水の提供には再利用可能なアルミニウム製ボトルが採用され、カーボンニュートラルを確保するために主として地元で調達された食材によるメニューを提供するなど、幅広い試みが行われた。
だが、一部のVIPクラスの参加者の移動手段として多数のプライベートジェットがチャーターされたことは批判を招いた。
COP26開催を担当したアイデンティティは、参加者がどのような移動手段を選ぶかまでは指示できないとしている。
チューリヒで毎年開催されるテクノロジー系カンファレンスNOAHのマルコ・ロドジネク最高経営責任者(CEO)は、参加者には鉄道その他の公共交通機関の利用を推奨している、と話す。
だが全般的に世界各国の企業社会では、経営幹部のカンファレンス参加がもたらす影響への対策はなかなか進んでいない。グローバル・ビジネス・トラベル・アソシエーションが2021年4月に実施した世界的な調査では、出張の際に持続可能性に優れた交通手段を用いることを奨励している企業は、全体の7%に留まっていた。
「肉抜き」メニューも
イベント主催企業インフォーマやベルリンで開催されるK5フューチャー・リテールの主催者などは、参加枠を予約する際にカーボンオフセットを購入する機会を提供している。
カーボンオフセットは、汚染者が植林活動などの排出量削減プロジェクトに投資することで、投資に応じて与えられたクレジット(排出権)を使って自らの排出量による影響を相殺できるようにする仕組みだ。