最新記事

環境

「対面」復活を急ぐカンファレンス業界 環境負荷対策が課題に

2022年2月7日(月)16時28分

コロナ禍による2年近い制限を経て、つながりを取り戻すことを人々は強く求めている。1月に開催されたCESの復活はオミクロン株に水を差された格好だが、この感染力の高い変異株の感染が全世界的に急増している中で、開催地ラスベガスに直接足を運んだ人は4万人を超えた。

コロナ禍に襲われる前年の2019年には、17万5000人以上が来場した。

オンラインでのカンファレンスの方がよりインクルーシブ(包括的)で参加しやすいものになる可能性がある。参加費も安く、アクセスも容易だからだ。だが時には、合意形成を図る上で直接対面することが不可欠な場合もある。

英国で活動する複数の市民団体による組織である「COP26コアリション」は、昨年のCOP26をリアルで開催することは、開発途上国の声を十分に反映させるための唯一の手段だった、と指摘する。

「もちろん、こうしたカンファレンスのカーボンフットプリントはできるだけ低く抑えるべきだ。だがグローバルな経済や課題を考えるうえでは、(オンライン開催といった)他の選択肢は好ましくないと考えている」と語るのは、COP26コアリション代表のアサド・レーマン氏。

グラスゴーで開催されたCOP26には多くの国から約4万人の代表団が参加した。2週間にわたる同イベントでは、会場で使われた1万5000平方メートルものカーペットが会議後に寄付されたほか、参加者への飲料水の提供には再利用可能なアルミニウム製ボトルが採用され、カーボンニュートラルを確保するために主として地元で調達された食材によるメニューを提供するなど、幅広い試みが行われた。

だが、一部のVIPクラスの参加者の移動手段として多数のプライベートジェットがチャーターされたことは批判を招いた。

COP26開催を担当したアイデンティティは、参加者がどのような移動手段を選ぶかまでは指示できないとしている。

チューリヒで毎年開催されるテクノロジー系カンファレンスNOAHのマルコ・ロドジネク最高経営責任者(CEO)は、参加者には鉄道その他の公共交通機関の利用を推奨している、と話す。

だが全般的に世界各国の企業社会では、経営幹部のカンファレンス参加がもたらす影響への対策はなかなか進んでいない。グローバル・ビジネス・トラベル・アソシエーションが2021年4月に実施した世界的な調査では、出張の際に持続可能性に優れた交通手段を用いることを奨励している企業は、全体の7%に留まっていた。

「肉抜き」メニューも

イベント主催企業インフォーマやベルリンで開催されるK5フューチャー・リテールの主催者などは、参加枠を予約する際にカーボンオフセットを購入する機会を提供している。

カーボンオフセットは、汚染者が植林活動などの排出量削減プロジェクトに投資することで、投資に応じて与えられたクレジット(排出権)を使って自らの排出量による影響を相殺できるようにする仕組みだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ADBと世銀、新協調融資モデルで太平洋諸島プロジェ

ワールド

アングル:好調スタートの米年末商戦、水面下で消費揺

ワールド

トルコ、ロ・ウにエネインフラの安全確保要請 黒海で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中