「対面」復活を急ぐカンファレンス業界 環境負荷対策が課題に
コロナ禍はオフィスでの仕事風景を一変させたかもしれない。だが「カンファレンス界」には、まだ変化の兆しはない。写真は1月5日、米ラスベガスで開かれたCESの会場で撮影(2022年 ロイター/Steve Marcus)
コロナ禍はオフィスでの仕事風景を一変させたかもしれない。だが「カンファレンス界」には、まだ変化の兆しはない。
オンライン開催を維持することによる環境面でのメリットは大きいが、イベント主催者はパンデミックが落ち着き次第、直接の対面による商談の機会を復活させたいと考えている。
航空機やガソリンを大量に消費するシャトルバスを使った移動から、膨大に消費されるペットボトル入りの水やカタログの山に至るまで、イベント開催による環境への負荷は甚大だ。
コーネル大学及び全米ライフサイクル評価センターの研究者が先月「ネイチャー」誌に発表した研究によれば、コロナ禍以前、国際イベントや会議産業による年間のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)は、米国の温室効果ガスの年間排出量に匹敵する規模だった。
研究者らは、カンファレンスを全面的にオンラインに移行することでカーボンフットプリントを94%減らすことができると試算している。対面とオンライン併用のハイブリッド方式にシフトし、参加者のうち最大で半数までがオンラインに移行するだけでも、3分の2は減らせるという。
だがカンファレンス主催者らは、プロフェッショナルが一堂に会することのメリットを最大限活かすには、皆が実際に顔を合わせる必要があると言う。プレゼンテーションの前後に人脈を築いたり、競合他社や製品との直接の比較をしたり、交渉の帰すうを決める決定打として、対面でのやり取りは欠かせないというわけだ。
「仮想空間で『偶然の出会い』を生み出すことは本当に難しい」と語るのは、イベント代理店アイデンティティでイノベーション担当ディレクターを務めるフィリップ・マッグス氏。同社は、昨年グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の開催を担当した。
主催者から見れば、対面による会議の方が稼ぎになる。360ライブメディアでイベント戦略・デザイン担当バイスプレジデントを務めるベス・サーモント氏は、一般的に、直接対面によるカンファレンスに比べ、デジタル開催の場合は参加料もスポンサー出資も低くなり、収益は約半分になってしまうと語る。
ラスベガスで開かれるデジタル見本市「CES」や不動産業界のカンファレンスMIPIMなどの主催者を含め、ロイターの取材に応じたカンファレンス主催大手6社は、コロナ禍前と同じ規模の対面イベントを復活させ、その一方で可能な限りカーボンフットプリントを抑制していく予定だとしている。
ロイターニュースでも、「ロイターイベント」と呼ばれるカンファレンス部門を運営している。
COP26もリアル開催で
音楽イベントや展示会、フェスティバル、そして企業カンファレンスなどのイベント産業は、コロナ禍から回復していくものと予想されている。ベリファイドマーケットリサーチでは、2020年には8870億ドル(101兆8500億円)だった市場規模が、28年には2兆2000億ドルに成長すると見込んでいる。