最新記事

コミュニケーション

成功する情報発信に共通する「ナラティブ」とは、戦略PR第一人者が解説

2021年10月19日(火)19時34分
flier編集部

ナラティブづくりは経営者の仕事である

── ナラティブの成功を左右するものは何でしょうか。

もちろんSNSや動画制作などを通じてPR担当者がナラティブの実践者であることは大事です。ただ、もっと根本的な要因は、経営層がしっかりナラティブづくりに関わっているかどうか。ナラティブの起点は、企業やブランドの「存在意義」、つまりパーパスです。このパーパス策定は社長をはじめとする経営者の仕事です。

ナラティブは、消費者、従業員、取引先などと多様なステークホルダーを巻き込む力をもちます。冷凍餃子の例だと、たとえば普段は味の素冷凍食品が売り込む先であるスーパー側から、「一緒に『手間抜きコーナー』をつくりませんか?」と声がかかります。こうしてお客様が喜び、商品が売れて従業員も喜ぶことにくわえ、取引先にも感謝されるのです。経営者の立場に立つと、主語が自分や自社である「自分語りのストーリー」よりも、多様な人々が関与し、拠りどころにしたくなるようなナラティブを描く必要があるといえます。

── たしかにそれは魅力的な人材獲得においても重要ですね。

そうですね。個人も会社選びでは、会社のブランドや年収ではなく、「この会社で働くことで私はどうなるのか?」を気にするようになっています。「私が入りたい物語があるか」が就職や転職の基準になってきている。その意味で、採用広報でナラティブによる共体験を謳えているかは重要です。その意味で、ナラティブは従業員の結束を高めるだけでなく、優秀な人材を引きつけてくれます。

同様に、個人のキャリアに対してもナラティブの発想を応用できます。本書には、企業だけでなくメルケルなどの世界の政治家や「こんまり」こと近藤麻理恵さんの事例を紹介しました。有名人に限らず、「この人と一緒に物語を紡ぎたい」と思ってもらえるかどうか、と考えてみるとよいですね。「自分自身が何をしたいか」をデザインすることももちろん大事ですが、周囲の仲間やステークホルダーを主語にして、5年後やその先をイメージすることをおすすめします。

PRの原点に立ち返らせてくれたマーケティングの古典的名著

── 本田さんは小さい頃から読書好きだったそうですが、PRのプロとしての道を極めていくなかで影響を受けた本は何でしょうか。

一冊挙げるとしたら、世界的ベストセラーを連発するコラムニスト、マルコム・グラッドウェルの『ティッピング・ポイント』(文庫版は『急に売れ始めるにはワケがある』)です。マーケティングの古典的名著といえます。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米製造業新規受注、3月は前月比4.3%増 民間航空

ワールド

中国、フェンタニル対策検討 米との貿易交渉開始へ手

ワールド

米国務長官、独政党AfD「過激派」指定を非難 方針

ビジネス

米雇用4月17.7万人増、失業率横ばい4.2% 労
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中