最新記事

日本企業

このアイスが64円! 10期連続売上増シャトレーゼが「おいしくて安い」理由

2021年10月18日(月)10時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

業績が好調にもかかわらず、シャトレーゼが株式上場をしない理由は、この社是にあると齊藤氏は言う。上場すると、株価を上げたり、配当を増やしたりすることを考えなければいけなくなる。「お客様」よりも株主が一番になってしまうことを懸念した。

現在、シャトレーゼの集客力が注目され、出店のオファーや業態転換の相談が相次いでいるという。しかし、齊藤氏は、ただ店舗数を増やせばいいわけではないと考えている。最も大切な加盟条件は、「利他の心」を持っていることであり、「三喜経営」に心から賛同していることだという。

chateraisebook20211015-3.jpg

ロードサイドにあるワンストップ型店舗の新店(須玉店)。出店戦略にも独自性がある(『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』40ページより)

「おいしくて安い」を実現したファームファクトリー

シャトレーゼが目指しているのは、「おいしくて安い」である。

安い材料を使って値段を落としたり、おいしさよりも保存がきくことを優先したりするのは、作り手や売り手の都合だ。それ以外のところで工夫をするのがシャトレーゼの方針である。齊藤氏は、常に「お客様の目線」で事業を見ているのだ。

コストを抑える方法として行ったのが、製造工程の機械化だった。それにより、人件費が抑えられる。さらに手で触れる作業が減るため、菌の繁殖を防ぐというメリットも生まれた。

また、工場直営の店舗展開をすることにより、問屋や小売店の中間マージンがなくなった。それらを価格に反映することができ、安さが実現する。

chateraisebook20211015-4.jpg

アイス製造と製餡のメイン工場である白州工場(『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』30ページより)

シャトレーゼは、「ファームファクトリー」と呼ぶシステムを採用している。必要な素材を農場・農園から直接仕入れて工場に送ることで、新鮮な状態でお菓子にできるというもの。これこそ同社のおいしさへのこだわりの象徴だ。

1994年、この「ファームファクトリー」構想は、名水で知られる山梨県の白州に工場を建てたときに打ち出された。水は素材を生かすために大切という考えから、白州を選んだという。水は原材料欄には記載されないが、すべての商品に関わる大切な原材料のひとつだ。

乾燥した小豆はたくさんの水を吸うため、あんこを作るときは、洗うときから白州の水を使う。中道工場や豊富工場でも、使っているのは白州の水だ。水をタンクローリーで運ぶコストは、年間数千万円単位になるという。

また、洋菓子作りに欠かせない卵にもこだわりがある。

代表取締役社長の古屋勇治氏によると、規模が大きい菓子製造会社では、一般的に「液卵」という割って混ぜてある状態の卵を仕入れるという。

シャトレーゼも当初は液卵を購入していた。しかし、割ってから時間が経った卵は、スポンジのふくらみが弱くなるため、卵液によって出来栄えにバラつきが出てしまう。そのバラつきを補うのが、膨張剤などの添加物だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中