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このアイスが64円! 10期連続売上増シャトレーゼが「おいしくて安い」理由

2021年10月18日(月)10時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

だがシャトレーゼでは、添加物には頼りたくない。そこで、卵を直接仕入れて、自分たちで割ろうという発想にたどりついた。生産者と直接契約を結ぶことにより、今日生まれた新鮮な卵を明日には焼き立ての生地にすることが可能になった。

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1分間に500個の卵を割る割卵機。ケーキやシュークリームの製造ラインのすぐ隣で割っている(『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』64ページより)

シャトレーゼは、農家の利益を見込んだ固定価格で新鮮でおいしい卵を買う。それにより、流通コストを抑えられる。一方で、養鶏家は、相場に左右されることなく、安定した価格で卵を売ることができる。その結果、おいしくて安全なお菓子を世に送り出せる。

ファームファクトリーは、社是の「三喜経営」に沿った仕組みである。

完全赤字のアレルギー対応ケーキを売る理由

多くの商品を扱うシャトレーゼでは、アレルギー対応のデコレーションケーキも販売しているが、専務取締役の永田晋氏によると、社員の提案から始まったプロジェクトだったという。

卵、牛乳、小麦粉はケーキに欠かせない材料だ。これらにアレルギーを持つ子供は、誕生日やクリスマスにもケーキを食べることができない。そんな子供たちにも、ケーキを食べさせてあげたいと考えた社員がいた。

しかし、苦労の連続だった。シャトレーゼのケーキは、添加物ではなく卵でスポンジをふくらませている。その卵が使えない。材料を変え、製法を変え、多くの試行錯誤を繰り返した結果、なんとか卵の代わりに大豆たんぱく質、小麦粉の代わりに米粉を使ってスポンジを作ることに成功した。

アレルギー対応のお菓子は、製造にも困難が伴う。微細な粉の混入でも、アレルギーを起こす可能性があるためだ。それは、命に関わるかもしれない。

そこで白州工場では、前後1日ラインの製造をストップし、徹底的な清掃をした上で、アレルギー対応の商品だけを作るという。

永田氏は本書で、アレルギー対応のお菓子は完全な赤字の商品だと明かしている。あくまでも「お客様」に喜んでもらうための商品であり、採算度外視なのだ。

また、甘いものを制限されている糖尿病の人にもお菓子を楽しんでほしいという思いから生まれた糖質カットシリーズもある。こちらも、製造コストに対し、低価格に抑えられている商品だ。「お値打ち価格」も、シャトレーゼのこだわりなのだ。

そんな採算度外視の商品であっても、「あったらいいな」に応えることができるのは、シャトレーゼの商品が多品種であるからだという。ほかの部門で利益が出ているため、顧客に還元できるのだ。

コロナ禍においても、シャトレーゼが快進撃を続ける理由は、根幹にある「利他の心」なのだろう。先が見えない不安がある昨今、どうしても自分の利益を優先させたくなる。しかし、そういう企業だからこそ、多くの人の心をつかんで離さないのかもしれない。

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2019年、シャトレーゼは都市部に進出し、東京・銀座に新業態シャトレーゼ プレミアム「YATSUDOKI」を立ち上げた。その主力商品「プレミアムアップルパイ」(『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』155ページより)

シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか
 齊藤 寛 著
 CCCメディアハウス

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