最新記事

自動車

自動運転車の最新装備は「人」 スタートアップ各社が妥協路線を選択

2021年8月31日(火)17時15分

ウェイモによると、「ロボタクシー」車両の監視・支援に当たるチームは4つある。任務は多岐にわたり、利用者の質問への対応から、通行止めなど厄介な状況に対応する「第2の眼」を遠隔で提供することもある。チームの1つは、衝突などの事故が起きれば現場に出向いて対応する。

ウェイモのソフトウェアエンジニアであるナサニエル・フェアフィールド氏は、こうしたチームは「完全に自動化された車両の運行を1日中指揮するために協力して働いている」と、ロイターに書面で述べた。また、チームが遠隔で車を操作することはないと言う。

同氏は、「リモートからの操作乗っ取り、いわゆる『ジョイスティック操作』はやらない。遠隔で人間が操作しても実際には安全性は向上しないと考えている」として、接続に問題が起きる可能性を理由として挙げた。

ウェイモは、サンフランシスコでも自動運転車の商業運用を開始する許可を申請したが、当面は安全確保のためにドライバーを同乗させる。同社は多くの車両オペレーターを動員して、交通量が多く複雑な都市環境でのテストを強化している。

今年、ウェイモによるサンフランシスコでのテストに参加したオペレーター経験者によれば、1日約30回は自動運転モードを「解除」して、運転に介入しなければならなかったという。赤信号での停止が遅れたり、前方車両の急減速・急停止があったりといった場合だ。

「人間はいつも身構えている。『この動きはまったく予想していなかった』とか『普通やらないだろう、これは』みたいな状況はしょっちゅう起こる」と経験豊富な安全オペレーターは言う。機密保持契約上、氏名は明かせないという。

ウェイモの公式発表では、2020年には101万キロに渡る走行で21回の自動運転解除が発生している。

不都合な真実

規制当局も、引き続き自動運転に人間が関与するよう求めている。カリフォルニア州車両管理局はロイターに対し、カリフォルニア州法は「メーカーが(自動運転)車の位置と状況を常に監視できるよう、双方向の通信リンクを義務付けている」と述べた。

他の「ロボタクシー」企業は、自動運転車に道路を走らせる手段として遠隔操作を採用している。

ラスベガスでは、スタートアップのヘイローが自動運転車の配車サービスを顧客に提供しているが、携帯電話大手TモバイルUSが運用する高速の5Gネットワークを介した、人間による遠隔操縦である。

リモート操作関連企業ファントムオートの共同創業者であるエリオット・カッツ氏は、「つい数年前は、この業界では人間によるリモート支援は『不都合な真実』だった」と語る。「それを公然と口にする人は事実上いなかった。こういう車は自動運転で必要に応じてどこにでも行けるし、人間のドライバーができることは何でもできる、というのが建前だったから」

「だが、そう簡単には行かないことは今では誰もが知っている」

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

2日に3兆円超規模の円買い介入の可能性、7日当預予

ワールド

OECD、英成長率予想引き下げ 来年はG7中最下位

ビジネス

海運マースク、第1四半期利益が予想上回る 通期予想

ビジネス

アングル:中国EC大手シーイン、有名ブランド誘致で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中