最新記事

自動車

自動運転車の最新装備は「人」 スタートアップ各社が妥協路線を選択

2021年8月31日(火)17時15分
自動運転技術を搭載した自動車の車内

米ゼネラル・モーターズ(GM)の子会社であるクルーズや、 中国新興企業の小馬智行(ポニー・エーアイ)をはじめとする自動運転スタートアップは、昨年からカリフォルニア州のいくつかの地域で自動運転車のテストを始めている。写真はポニー・エーアイの自動運転技術を搭載した自動車の車内。カリフォルニア州フリーモントで6月撮影(2021年 ロイター/Nathan Frandino)

米ゼネラル・モーターズ(GM)の子会社であるクルーズや、 中国新興企業の小馬智行(ポニー・エーアイ)をはじめとする自動運転スタートアップは、昨年からカリフォルニア州のいくつかの地域で自動運転車のテストを始めている。

それらには新たに付け加えられた「機能」がある。人間のオペレーターだ。

運転席にドライバーこそいないが、助手席には安全オペレーターが座る。「何かあれば、赤いボタンを押して車を停止できる」と、ポニー・エーアイのジェームズ・ペン最高経営責任者(CEO)はロイターに語った。

トヨタ自動車などが出資するポニー・エーアイは来年、カリフォルニア州の一部で自動運転配車サービスを展開する予定で、その際にはオペレーターは同乗しない予定だ。それでも、遠隔オペレーターが車を監視し、車がトラブルに陥ったときに指示を与えるようにする、とペンCEOは言う。

アルファベット傘下のウェイモは、アリゾナ州フェニックスで提供する自動運転ミニバンの支援用に、蛍光イエローのベストを着た係員を現場に配置している。

クルーズは2020年10月、サンフランシスコで5台の自動運転車の夜間運用を開始したが、やはりフロントシートに人間を乗せている。クルーズの広報担当者によれば、この「お目付役」は「自動運転中、いつでも車を停止できる」という。

「クルーズでは、自動運転車の開発は、単なる技術競争ではなく『信用』の競争でもある、と考えている」とこの広報担当者は説明。「そうした観点から、自動運転車の実験工程から人間を省くことはない。安全な開発のためだけではなく、それ以上に、社会との信頼関係を築いていくためだ」

韓国の現代自動車グループは、遠隔操作関連スタートアップのオットピアに出資している。オットピアは、現代自動車の自動運転合弁事業モーショナルが運用する「ロボタクシー」事業向けに遠隔支援技術を提供する予定だ。

テスラも要求

自動運転車はソフトウェアが自動で運転してくれるはずだったのに、人間の介在が続いている──。この事実は、過去10年にわたり投資家の資金を何十億ドルも費やしてきた自動運転産業が今なお抱えている課題を浮き彫りにする。

走行範囲を限定しない運転手不在の「ロボタクシー」は、技術上・規制上の障害がいくつもあり実現のメドが立たない。そこで一部の自動運転企業では、近い将来に収益を計上できるよう、人間のお目付役の必要性を受け入れ、野心的な計画を縮小しつつあることが、投資家やスタートアップ幹部たちへのインタビューで明らかになった。

最近、「完全自動運転」をうたうソフトウェアの新しいテストバージョンを発表したばかりのテスラも例外ではない。同社は、テスラ車のドライバーは「特に先が見えにくい曲がり角や交差点の通過時、余裕のない交通状況の場合には、即座に操作できるよう備えておく」べきだと述べている。米国の安全規制当局は、一連の死亡事故の発生を受けて、テスラの運転支援システム「オートパイロット」に関する正式の調査を開始したところだ。

ウェイモの現場アシスタンス

ウェイモは10年以上にわたって自動運転技術の開発を行ってきており、2018年にはフェニックスで初の実用「ロボタクシー」を発表した。だが、グーグルによる先駆的な自動運転車プロジェクトを継承したウェイモは、いまだに人間を制御の中に介在させている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 9
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 10
    中国がインドに仕掛ける「水戦争」とは? 中国のダ…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中