最新記事

ビットコイン

ビットコインが、既に失敗した「賢くない」投資である理由

A Sound Investment?

2021年4月13日(火)19時03分
ウィレム・バイター(コロンビア大学客員教授)
ビットコイン(イメージ)

ILLUSTRATION BY PESHKOVーISTOCK

<推進派の言う「買うべき理由」はこじつけだらけ──賢い投資家はビットコインに手を出すべきではない>

企業経営者らはビットコインに投資すべきだ──。

エコノミストのダンビサ・モヨは、3月上旬にフィナンシャル・タイムズで発表したオピニオン記事で、そう主張している。根拠は3つ。ビットコインは企業リスクを軽減する手段で、暗号資産(仮想通貨)は新興経済国での事業をめぐる解決策を提供でき、デジタル通貨は「通貨プラットフォーム」という新たな未来の前触れ──だからだ。

これは正しい主張なのか。1つずつ検証してみよう。

まず、ビットコイン購入が企業リスクを軽減する仕組みがはっきりしない。モヨが挙げているのは、歴史的な投機的バブルを逃すリスクだけだ。

確かに、ビットコインの急騰傾向に乗り遅れたら、企業は深刻な結果に直面しかねない。例えば、ビットコインで資金を稼いだライバルによる買収だ。

ビットコインに投資すれば、ビットコインによる資本利得機会の喪失は確実に防げる。だが、それは賢い投資を意味しない。潜在的リターンと高い物的資本喪失リスクを比較検討するなら、なおさらだ。

新興経済国で発生しがちな問題の解決策を提供できるという主張もこじつけだ。

確かに、中央銀行デジタル通貨(CBDC)も含めた法定通貨と異なり、ビットコインといった分散型の民間の仮想通貨は放漫な政府に「過剰発行される」危険がない。

しかし、通貨の過剰発行は新興市場の金融的安定に対する脅威の1つにすぎない。その脅威を取り除くからといって、ビットコインが突如、信頼できる価値貯蔵手段に変貌するわけではない。

現実は正反対だ。2009年の使用開始以来、ビットコインは激しい値動きを繰り返している。

今年3月13日に6万1000ドルを超えて最高値を更新したビットコインは、最近では5万9000ドル前後で推移している。JPモルガンのアナリストらは2月17日付のメモで、3カ月の実現ボラティリティー(変動率)が87%に達したと指摘した(金の場合はわずか16%)。

ビットコインは中・低所得国への送金を容易にするのではないかとモヨは言うが、ビットコイン取引の悪名高い非効率性を度外視している。

ビットコインのブロックチェーンサイズは1メガバイトに制限され、検証プロセスは1ブロック当たり約10分間。1秒間に処理可能な取引は最大7件だ。対照的に、決済サービス大手ビザは1秒当たり平均1700件の取引を実行する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、6月の英販売台数は前年比12%増=調査

ワールド

豪家計支出、5月は前月比+0.9% 消費回復

ワールド

常に必要な連絡体制を保持し協議進める=参院選中の日

ワールド

中国、太平洋島しょ地域で基地建設望まず 在フィジー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中