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アメリカでビットコインの未来を決める判断が間もなく下される──スケジュールと見通し

2021年4月28日(水)20時07分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)

実は、承認されたカナダとブラジルのビットコインETFのうち1つずつ、SECに申請中の3つのビットコインETFが参照しているインデックスは、クラーケンの完全子会社であるCFベンチマークスが提供しています。

私は、CFベンチマークスのスイ・チャンCEOと密にコミュニケーションを取っていますが、SECを含めて規制当局とやり取りを行ってきたチャンCEOは、今年のSECによる承認の可能性は「かなりある」と手応えを感じています。

「我々はFCA(英国金融行為監督機構)から規制されているベンチマーク算出業者であり、我々のインデックスを使ってCFTC(米国商品先物取引委員会)が規制するCME(シカゴマーカンタイル・取引所)のデリバティブ契約3500億ドル相当を決済してきた実績がある。SECの規制に関する要求を満たすことにかなり自信を持っている」と、チャンCEOは語っています。

また、チャンCEOによりますと、カナダ・ブラジルとSECでは審査プロセスに大きな違いがあります。

SECは、公式な届出とコメント制度を活用しており、申請者に対してなるべく公開された場でコミュニケーションをするように求めています。このため、SECと申請者の非公式な場でのコミュニケーションの機会は少なく、理解が深まらない原因となっています。

一方、カナダとブラジルの規制当局は、申請者から直接的に情報収集をする傾向があり、両者の間で直接詳細に話をつめることができると言います。こうした審査プロセスの違いもあって、結果的に米国がカナダとブラジルに先を超されたとも言えそうです。

ただ、上記の通り、米国でもビットコインETFをめぐる事態が好転してきているのは確かなようです。もしビットコインETFがSECに承認されれば、仮想通貨業界と伝統的な金融業界の距離がさらに縮まることになります。

4月には仮想通貨取引所コインベースがナスダックに上場しましたが、今回米国でビットコインETFが承認されることになれば、両者の融合は加速し、新たな金融の姿に向けて次の段階へと入っていくことでしょう。

[筆者]
千野剛司
クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)- 代表 慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社。2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。

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