最新記事

日本経済

コロナ対策で溢れたマネーは富裕層だけ潤す 「低成長バブル」で際立つ日本の二極化

2021年3月30日(火)18時28分

象徴的なのが、高級腕時計のロレックス。人気モデルは新品が手に入らず、転売目的が多い中古市場で定価の2ー3倍に当たる300万ー400万円で取引されている。日本ロレックスによると、世界中で人気モデルの引き合いが強く、商品の提供が需要に追い付かないという。

高級別荘地として知られる長野県の旧軽井沢地区では、昨年秋に東急リゾートが売り出した「億ション」が半年ほどで完売した。建物はもちろん、モデルルームさえまだ存在しなかったが、広さ90ー185平方メートル、1億─2.5億円程度の物件は抽選になるほどの人気を集めた。

実体経済からかい離し、株や不動産、その他の現物資産が膨張する光景は、30年前に日本が経験したバブル景気と重なる。当時は円高不況を乗り切るための金融緩和マネーが投資や投機に回り、日経平均株価は4万円に迫った。今回も株価はそのとき以来となる3万円台に乗せ、当時の水準を回復しつつある。

富裕層は濡れてに粟で格差拡大

しかし、30年前のバブル期と今とでは大きく異なる点がある。1986年から91年の実質成長率は年5%を超え、日本中が好景気に沸いた。一方、戦後2番目に長い景気拡大を記録した2012年から18年の成長率は年1%強。コロナが直撃した20年は4.8%のマイナス成長となった。低成長の中で資産価格だけが膨らみ、限られた「持てる者」だけが恩恵を受けている。

「89年ごろのバブルは日本経済がまだ成長していた。今は人口が減少している中でお札だけ増えている。過剰流動性相場だ」と、前出の倉田社長は話す。

日銀の資金循環統計を見ると、昨年12月末の家計の金融資産残高は1948兆円と過去最高を大きく更新。野村総合研究所によると、資産1億円以上の富裕層の純金融資産(金融資産から負債を差し引いたもの)は19年に333兆円と全体の2割を占め、17年から11%増加した。一方、全体の8割を占める3000万円未満は17年より世帯数が増える一方で、純金融資産は減少した。リーマン危機後から続く過剰流動性で、コロナ前から格差は拡大していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中