最新記事

金融

根拠なき米国株上昇 市場が織り込む過度な景気回復期待

2020年5月27日(水)11時55分

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界の経済活動が止まった2カ月ほど前には考えられなかったことだが、米S&P総合500種は26日、心理的な節目の3000ポイントを一時的に突破した。写真はニューヨーク証券取引所。5月26日撮影(2020年 ロイター/Lucas Jackson)

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界の経済活動が止まった2カ月ほど前には考えられなかったことだが、米S&P総合500種は26日、心理的な節目の3000ポイントを一時的に突破した。3月の安値から37%も値上がりした形だ。

しかし株式市場は、今のところデータの裏付けがない景気回復を織り込んでしまったかもしれない。一部の市場参加者は、株高は水準とスピードの両面で行き過ぎていると警鐘を鳴らしている。

相場上昇の背景には(1)米連邦準備理事会(FRB)と他の主要中銀による異例なほどの積極的金融緩和(2)米議会が承認した大規模経済対策(3)新型コロナワクチンの早期開発で世界経済の停止が最悪の打撃をもたらす局面は終わったとの期待――がある。

これについてコロニー・グループのチーフ市場ストラテジスト、リチャード・スタインバーグ氏は「市場参加者は身動きがとれなくなっていたところで、ワクチンのような希望の光を目にしたため、恐らく楽観ムードが妥当な範囲を超え、経済状況の先まで行ってしまったのは間違いない」と指摘した。

急速な株高は続かないとくぎを刺す声も出ている。PBCウェルス・マネジメントのマネジングディレクター、ジョージ・ゲロ氏は「政治的なニュースがもっと多く出てきて、市場参加者が米国の対中国、対欧州の問題を考え始めればすぐに、これまでの上昇分を幾らか吐き出すことになると思う」と話す。

ドイツ銀行のゼービング最高経営責任者(CEO)は26日、「私の見方では景気回復に関する基本的な想定は楽観的過ぎる。現段階では(コロナの)二次的、三次的影響は完全に織り込まれていない」と主張した。

株価は、実体経済が壊滅的な様相を呈している中で上昇してきた。例えば4月の雇用は前月比2050万人減と、大恐慌以降で最悪の落ち込みだった。

トールバッケン・キャピタル・アドバイザーズのマイケル・パーブスCEOは「かなり異常だ」と述べ、景気が「V字」回復しないのに市場は「V字」で戻っていると説明した。

一方スパルタン・キャピタル・セキュリティーズのチーフ市場エコノミスト、ピーター・カルディロ氏は、万事順調に進めば来年初めまでにワクチンが手に入る可能性があるとの見方を示した上で、足元の株高は希望的観測に基づいていると付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀には追加策の余地、弱い信用需要に対処必要

ビジネス

訂正(17日配信記事)-日本株、なお魅力的な投資対

ワールド

G7外相会議、ウクライナ問題協議へ ボレル氏「EU

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明へ、無所属
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 7

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中