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足りないのはマスクだけじゃない 「検温カメラ」需要急増、新型コロナウイルスで供給追いつかず

2020年4月15日(水)16時33分

サーモテクニクス・システムズ社製の体温計測カメラ。英ケンブリッジで8日撮影。提供写真(2020年 ロイター/Thermoteknix Systems Ltd)

新型コロナウイルスの世界的流行をきっかけに、人が職場に入る際に発熱していないか素早くスキャンできる赤外線カメラの需要が急増している。しかし、メーカーは、部品供給の支障に直面する中で生産対応に追われており、病院などの顧客を優先せざるを得ない状況だ。

食品の米タイソン・フーズや半導体の米インテルといった大手企業は、経済活動が再開した時に備えて赤外線カメラを試し始めた。

赤外線カメラメーカーの米FLIRシステムズ、英サーモテクニクス・システムズ、イスラエルのオプガル・オプトロニック・インダストリーズといった企業では売り上げが急増している。

従業員の体温測定には、手で持って操作する体温測定器を使うのが一般的で、米通販大手アマゾンや小売り大手ウォルマート・ストアーズがこうした方法を採用している。

しかし、この方法では時間がかかる上、測定者が社会的距離として推奨されている1.8メートルよりも従業員に近づいて作業する必要がある。

一方、赤外線カメラは、周囲の気温に比べてどの程度のエネルギーを発しているかを測定するもので、人が接触せずに測れるため安全性が高い。玄関口などに入ってくる人をスキャンし、警告音が出た人は体温計によるチェックを受ける。

インテルはロイターに対し、イスラエルにあるコンピューターチップ工場で使うため、複数メーカーの赤外線カメラを検討していることを明らかにした。タイソン・フーズは9日、150台以上の赤外線カメラを購入して4つの施設に設置したと発表。同社広報担当者は「最終的には当社のすべての食品生産施設に少なくとも1台ずつ設置する見通しだ」とした。

需要は急増、部品供給は追いつかず

2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染が拡大した後、赤外線カメラ技術はアジアの空港で広く使われるようになった。赤外線カメラシステムの料金は、カメラ、ディスプレー、その他のハードウエアを合わせて1台約5000―1万ドル。

30年以上前にサーモテクニクスを創業した医師のリチャード・サリズベリー氏によると、同社の第1・四半期の販売台数は平年の3倍以上に達した。

FLIRの産業向け部門のフランク・ペニシ社長は、マレーシアその他でロックダウン(封鎖)により部品供給が途絶える中で「製品需要が爆発的に増えている」と説明。「感染拡大阻止に奮闘している病院や医療施設を優先せざるを得なくなっている」と述べた。

イスラエルのオプガルは、産業設備の保守点検用に使われていた赤外線カメラを、体熱チェックに使えるよう改良した。事業開発部門のディレクター、エラン・ブルーステイン氏によると、過去2カ月間の販売台数は1000台で、旧型を2013年発売以降に売った累計台数よりも多くなった。

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