最新記事

技術流出

トランプ、半導体めぐりオランダに圧力 狙いは中国への技術流出阻止 

2020年1月15日(水)09時16分

核心部分は安全保障

ASMLの機器は、ウエハーと呼ばれるシリコン板にきわめて精細な回路をレイアウトするため、レーザーによって生成し巨大なミラーで絞り込まれる極端紫外線(EUV)のビームを利用する。これによって、民生用でも軍事用でも不可欠とされる、より高速で強力なマイクロプロセッサ、メモリその他の先進的な部品の製造が可能になる。

現在、最先端の半導体を製造する能力を持っているのは、米国のインテルや韓国のサムスン電子<005930.KS>、台湾のTSMC<2330.TW>など一握りの企業に限られる。

だが、中国はこれらの企業に半導体製造技術の分野で追いつくことを重要な国家的優先課題として掲げており、その取り組みに数百億ドルを投資している。

こうした動きは、国家安全保障上の理由から中国への高度テクノロジーの流出阻止を目指すトランプ政権の取り組みと真っ向から対立してきた。米国製品の輸出企業は現在、特別な許可がなければ、ブラックリストに掲載された中国企業、たとえば巨大電気通信メーカーの華為技術(ファーウェイ)や監視機器を扱う杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)<002415.SZ>などへの輸出を行うことができない。

また、米国政府は、たとえブラックリストに掲載されていない相手であっても、米国のテクノロジーによって作られた製品を販売したいと考える企業に対して、中国企業への輸出許可を与えない場合がありうる。とはいえ、米国外で製造を行っているASMLのような企業の場合は、テクノロジー流出の防止がはるかに難しくなる。

現在の規制のもとでは、米国は自国製部品が価格の25%以上に相当する場合、他国から中国に向けて出荷される多くのハイテク製品に関して、米国政府による許可取得を義務づけることができる。2人の関係者によると、米商務省はASMLのEUV機器について監査を実施。しかし、25%以上という基準に該当するという結論には至らなかった、と関係者の1人は明らかにした。

ロイターが昨年11月に報じたとおり、米商務省は現在、一部のケースに関して、25%という基準をさらに厳しくすることを検討している。

輸出を直接阻止する方法がなかったため、トランプ政権は同盟国であるオランダに対し、安全保障上の観点を考慮するよう求めた。リソグラフィ機器は、民生・軍事の双方で利用される、いわゆる「軍民両用」テクノロジーの輸出制限に関して協調する「ワッセナー・アレンジメント」と呼ばれる国際協定の対象となっている。

2人の関係者がロイターに語ったところでは、米国防総省当局者は、ASML製品輸出の安全保障上のリスクに関して、オランダ側のカウンターパートと協議を重ねた。会合は2018年末と2019年1月にワシントンのオランダ大使館で行われたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル一時155円台前半、介入の兆候を

ワールド

英独首脳、自走砲の共同開発で合意 ウクライナ支援に

ビジネス

米国株式市場=S&P上昇、好業績に期待 利回り上昇

ワールド

バイデン氏、建設労組の支持獲得 再選へ追い風
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中