最新記事

日本経済

展望2020:金融 どうなる日本の政策金利 日銀マイナス金利解除の見方も

2020年1月4日(土)09時02分

年後半は金利上昇、日銀のマイナス金利政策解除を予想

パインブリッジ・インベストメンツ 債券運用部長 松川忠氏

年前半と後半で異なるシナリオを描いている。年前半は、景気はそれほど良くならず、日銀も動かないため、長期金利でゼロ%プラスマイナス10bpのレンジ予想だ。

しかし、年後半になれば、新興国や欧州の景気が回復、日米に波及する中で、世界経済全体が徐々に良くなってくるだろう。そうしたなか、日銀のマイナス金利政策解除の可能性が高まるとみている。

マイナス金利政策の「先駆者」であったスウェーデン中央銀行が政策金利をゼロ%に引き上げた。グローバル景気が改善する中、マイナス金利政策の弊害や副作用にスポットがあたり、脱却の動きが世界的に広がってくると予想している。

マイナス金利脱却で警戒されるのは円高だが、世界的に脱却の動きが広がれば、為替への影響は限定的になる。銀行株主導で株価も上昇する。長期投資家にとって、金利はスティープ化よりも絶対水準がポイントだ。30年債利回りが1%超えた方が生保などにはメリットがあるだろう。

2%の物価目標に達していなくとも、マイナス金利の脱却は多くから歓迎されるのではないか。

10年最長期国債利回り(長期金利)の予想レンジ:マイナス0.10%─プラス0.40%

金利は上昇方向、10年債利回りプラスならスティープニング

アセットマネジメントOneの債券運用グループ、ファンドマネージャー 鳩野健太郎氏

2020年の米国経済は相対的に堅調になるとみており、FRBは利下げには踏み切らないだろう。市場の利下げの織り込みが剥落した場合、米10年債利回りは2.2%近辺まで上昇余地がある。

日銀も金融緩和方向にかじを切っているわけではなく、現状の金融政策を据え置くとみている。米金利の上昇につれて、円金利も上昇していくが、長期金利がプラス圏に戻った場合、超長期ゾーンの金利水準が相対的に上昇するとみている。

過去を振り返ると、長期金利の居所次第でイールドカーブは全く違う動きとなる。長期金利がマイナス圏にある時は、ゼロ金利制約がある投資家がいることもあり、プラス利回りの超長期が選好され、イールドカーブに対してフラット化圧力がかかりやすい。

一方、長期金利がプラス圏になると、一部の投資家のトレーディング目的の取引が超長期ゾーンから長期ゾーンに代わる可能性が出てくる。18年に長期金利が0.15%まで上昇した時、7年ゾーンがゼロ%を超えるなど、先物のスクイーズが数カ月間続いた。長期ゾーンまでの金利上昇幅は緩やかとなり、イールドカーブがスティープ化していく。

長期金利は一時的にプラス0.1%を超えるかもしれないが、マイナス0.10%を実現する可能性は低く、金利は上昇方向にあるとみている。

10年最長期国債利回り(長期金利)の予想レンジ:マイナス0.10%─プラス0.10%

(伊賀大記 坂口茉莉子 編集:青山敦子)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中