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郵政郵政民営化の悪影響? かんぽ不正販売「元官僚」で立て直しへ

金融庁は、かんぽ生命保険による不適切な保険販売で、同社と日本郵便に対して保険業法に基づき保険販売を3カ月間禁じる一部業務停止命令を出した。写真は都内で2012年10月撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung Hoon)
日本郵政グループは27日、持ち株会社である日本郵政の長門正貢社長、かんぽ生命保険の植平光彦社長、日本郵便の横山邦男社長が退任すると発表した。不適切な保険販売で金融庁や総務省から行政処分に伴う経営責任の明確化を求められ、そろって引責辞任する。経営を引き継ぐ3社長はいずれも元官僚で、信頼回復への道筋を早期に付けられるかが今後の焦点となる。
経営トップら取締役を決める指名委員会や取締役会で正式に決めた。日本郵政の長門社長は同日都内で記者会見し、「このような事態を招いたことを深くお詫びする」と陳謝した。行政処分に関しては「厳粛に受け止めている。2度とこうした事態を起こさないよう、内部管理体制の強化とコンプライアンスの徹底に取り組むとともに、信頼回復に向け全力を尽くす」と述べた。
自身の辞意を巡って長門氏は「郵政民営化に参加することで国に貢献できると(社長職を)引き受けた仕事だったが、貢献どころか迷惑をかけることになった。信頼も棄損し、断腸の思いだった。8月上旬には責任をとらなければならないと覚悟し、少数の関係者に報告させて頂いていた」と、胸の内を明かした。
長門社長の後任には増田寛也元総務相が就く。かんぽ生命社長に千田哲也副社長、日本郵便社長に日本郵政の衣川和秀専務執行役を充てることも決めた。行政処分に関する情報を事前に聞き出していた日本郵政の鈴木康雄上級副社長も、郵政3社長とともに2020年1月5日付で退任する。新体制は翌6日からスタートする。
トップ交代と併せて役員報酬の減額処分も決めた。かんぽ生命と日本郵便は20年1月から6月までの月額報酬を最大40%、日本郵政は最大30%の減額処分とする。
保険販売3カ月停止
金融庁は27日、かんぽ生命による不適切な保険販売で、同社と日本郵便に対して保険業法に基づき保険販売を3カ月間禁じる一部業務停止命令を出した。グループの不正に対する企業統治意識の低さを問題視し、日本郵政も含む3社に20年1月末までに業務改善計画を提出することも命じた。
かんぽ生命と日本郵便が業務停止命令を受けるのは初めて。不正が全国に広がるなかで再発防止を徹底するには保険商品の販売をいったん停止する必要があると、同庁は判断した。停止期間は20年1月1日から3月31日までで、郵政グループが20年1月からと想定していた保険商品の販売再開は4月以降に先送りとなる。金融庁とともに総務省も行政処分を発表した。
外部弁護士らで構成する特別調査委員会は18年度までの5年間で法令や社内規定違反が疑われる保険契約が1万2836件に上り、うち670件で違反を認定したと18日に発表していた。違反が疑われる契約件数について9月に公表した中間報告では6327件としていた。
郵政グループは当初、保険販売の再開時期を10月と見込んでいたが問題が収束せず、中間報告と併せ20年1月へと半年間延期した。来年3月にあらためて公表する追加報告書で違反件数がさらに膨らむのは必至で、いつ通常営業に戻れるかは依然として見通せない。
*内容を追加しました。
(山口貴也、梅川崇、清水律子 編集:内田慎一)


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