最新記事

ビジネス

ビジネスジェットの私的利用、米企業の租税負担に重圧

2019年12月7日(土)11時55分

連邦航空局のデータによれば、米国における企業社用機の運航は、2019年には発着回数450万回に達する勢いで、2007年以来で最高となっている。ただし、大企業幹部による利用が占める比率はわずかである。

米国における社用機の利用に対する社会的なイメージは、金融危機が悪化の一途をたどっていた2008年に地に墜ちた。3大自動車メーカーのCEOが金融支援を求めるためにワシントンを訪れる際に社用機を使ったことが、連邦議会で厳しく批判された頃である。

その余波は非常に大きく、ゼネラルモーターズなどは、当初は救済条件のなかで社用機の使用を禁じられたほどだった。

「だがその後、経済全体が息を吹き返した。株価は過去最高を記録しており、それに伴って、社用機の利用も復活してきた」と語るのは、民間航空のトレンドを分析するシェルパリポート・ドットコムのニック・コプリー社長。

開示された情報によれば、GMも社用機の運航を復活させている。

「幹部報酬の隠された要素」

とはいえ、多くの企業においては、投資家にとって社用機の本当のコストは謎のままだ。

S&P500社に含まれる企業の委任状説明書をロイターが分析したところ、公的な提出書類のなかで、控除適用外となった価額を詳述していた企業はごく少数にとどまった。

こうした情報を開示していた数少ない企業の1つが、決済システム・クレジットカード事業のビザである。同社の委任状説明書によれば、幹部及びそのゲストによる社用機のプライベート利用によって失われた控除額が、2016年から2018年にかけて4倍以上に増加し、2018年9月決算の会計年度には480万ドルに達したとされている。

ビザにコメントを求めるメッセージを送ったが、回答は得られていない。

もう1つの例外的な企業がケーブルテレビ放送グループのコムキャストで、2018年、幹部及びそのゲストによるフライトに関して適用されなかった控除額は880万ドルと報告されている。

コムキャストはコメントを拒否している。

500万人近い加入者を抱える労組出資の年金基金を代理するCtWインベストメント・グループでエグゼクティブ・ディレクターを務めるディーター・ワイツェネガー氏は、こうした費用が隠れた幹部報酬になっていると指摘する。

「経営幹部レベルに掛かる費用が企業にとっていかに高くついているか、もっと正確に把握することが非常に重要だ」とワイツェネガー氏は言う。「そこが開示されていなければ、投資家は失われた控除について知る機会がなくなってしまう」

ビザとコムキャストはいずれも年間の純利益が100億ドルを超えており、社用機のプライベート利用に伴う費用など些細なものかもしれないが、もっと規模の小さい企業にとっては、はるかに大きな影響が生じる可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、エヌビディアAI半導体の中国販売認可を

ワールド

習氏、台湾問題で立場明確に トランプ氏と電話会談=

ビジネス

EU、AIの波乗り遅れで将来にリスク ECB総裁が

ワールド

英文化相、テレグラフの早期売却目指す デイリー・メ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中