最新記事

ビジネス

ビジネスジェットの私的利用、米企業の租税負担に重圧

2019年12月7日(土)11時55分

米国企業による社用ビジネスジェットの利用が金融危機前の水準に近づき、幹部が会社経費で社用機を私用に使う例も増えているなかで、こうした特権にいくらのコストがかかっているか、その実態は多くの投資家の目から隠されたままとなっている。写真は10月にラスベガスで開かれた全米ビジネス航空協会の展示会で撮影(2019年 ロイター/David Becker)

米国企業による社用ビジネスジェットの利用が金融危機前の水準に近づき、経営者や上級幹部たちが会社経費で社用機を私用に使う例も増えているなかで、こうした特権にいくらのコストがかかっているか、その実態は多くの投資家の目から隠されたままとなっている。

S&P500社のうち、最高経営責任者(CEO)による私用の社用機搭乗を認めている企業では、そうしたフライトに要する平均推定コストが、2017年の9万6532ドルから昨年は10万7286ドルと11%上昇した。

この数字は幹部報酬調査会社エクイラーが提供する最新のデータによるもので、金融危機の前年に当たる2007年の8万4636ドルに比べ、27%上昇している。

私的な利用のコストは経営幹部が課税されるべき所得だ。こうした推定は民間航空会社のフライトでファーストクラス料金に基づいている場合が多いが、社用機を使う場合は、実際のコストがはるかに高くなる。

トランプ規制で問題は深刻化

プライベート利用の目的は、家族との休暇から主要スポーツイベント観戦のための旅行、遠隔地にある家族の住居からの出勤などさまざまだが、問題は企業がこうしたフライトの費用を丸々負担しているというだけでなく、控除が適用できなくなるせいで企業の租税負担がかなり大きくなっている可能性があるという点にある。

というのも、内国歳入庁では、幹部個人による社用機使用に関する法人税額控除に関しては、その幹部による使用が生み出した業務上の推定価値を上限としているためである。

その結果、プライベート目的で社用機が使われた場合には、企業はパイロットの給与、メンテナンス費用、保険、機体の減価償却、リース費用など、さまざまな税額控除を利用できなくなる。

この問題をさらに深刻化させたのが、ドナルド・トランプ大統領が成立させた2017年減税・雇用法である。

法律事務所ウィンストン&ストローンLLPのパートナーを務める税金の専門家ルース・ワイマー氏によれば、この法律によって2種類のフライトに関する控除が廃止されてしまった。対象となったのは、純粋にビジネス上の接待(CEOがクライアントをゴルフの大会に誘うなど)、そして幹部が自宅から出勤するために社用機を使う場合であるという。

だが、米証券取引委員会(SEC)は、どの程度の費用が控除の適用外となったか開示を義務づけていないため、投資家には何も分からないままだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米国株式市場=小幅高、利下げ期待で ネトフリの買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中