最新記事

航空機

自動車に続いて航空機にも電動化の波 CO2排出削減の切り札になるか?

2019年6月26日(水)11時02分

空飛ぶバッテリー

シャープな横顔で、翼の両端にプロペラを搭載するアリスは、一から電気飛行機としてデザインしたと、エビエーションのオマー・バー・ヨヘイ最高経営責任者(CEO)は語る。

「端的に説明すると、巨大なバッテリーの側面に飛行機の絵を描いたということ」

伝統的なメーカーも、電気飛行機への関心も高めている。エンジンメーカーのロールスロイスは18日、アリスにモーターを供給している独シーメンスの航空宇宙部門を買収したと発表した。

エンジニアたちは、ハイブリッド飛行機により大きな希望を見いだしている。軽量化、小型化したジェットエンジンと、離陸時と上昇時に電気の力を使うハイブリッドは、燃料を30%節約できる。また、スラスターと電動プロペラで安定性が高まり、より流線形のフォルムにできることが可能で、空気抵抗を減らして燃料消費を軽減する。

エアショーの討論会に登壇した米ユナイテッド・テクノロジーズのポール・エレメンコ最高技術責任者(CTO)は、「そうなれば、経済性・持続可能性はこれまでの飛行機よりもバスのそれに近づくだろう」と語った。

金融大手のUBSは、環境に優しい航空機技術(グリーン・アビエーション)の需要は2040年までに1780億ドルになると予測している。

エアバスは次世代旅客機にハイブリッド技術を検討しているが、2030年代までに座席数200のハイブリッド飛行機がA320に取って代わる可能性は低い。

航空産業のCO2排出は世界全体の2.5%ほどだが、特にアジアで中間層が台頭していることにより、増加が予測されている。

業界ではハイブリッド機などが主流になるまでの対策として、航空会社が排出枠を購入し、オフセットするCORSIAプログラムの導入を始めている。

解決は遠い未来か

航空産業の成長を阻害せず、CO2排出量を2005年比で半減するのは簡単ではない。

ボーイングのグレッグ・ヒスロップCTOは、「われわれは、どうやってそれが成し遂げられるのかまだ分からない」と語る。

業界の首脳たちにとって、答えが「フライト数の削減」でないことだけは確かだ。

ロールスロイスのポール・スタインCTOは、「航空産業を成長させ、かつ持続可能にしなければならない」、「移動を減らすことを提案する人もいるが、それでは先の見通しが真っ暗だ」と、討論会で発言した。

ブリュッセルを拠点とする業界団体「エアラインズ・フォー・ヨーロッパ」は、「航空業界への課税は解決にならない」との声明を発表。一方、環境保護団体グリーンピースで交通や輸送の問題に取り組むサラ・ファイヨル氏は、課税や規制は必要だと主張する。

「環境と気候の非常事態に直面しているときに、数十年先に実現するかどうか分からない技術的解決策を待っているわけにはいかない」

(翻訳:宗えりか、編集:久保信博)

Laurence Frost and Alistair Smout

[ル・ブルジェ ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 9
    中国の砂漠で発見された謎の物体、その正体は「ミサ…
  • 10
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中