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自動車に続いて航空機にも電動化の波 CO2排出削減の切り札になるか?

2019年6月26日(水)11時02分

動力が完全に電動化された近距離移動用の電気飛行機、欧州航空機大手エアバスのハイブリッド小型機が、今年のパリ国際航空ショーをにぎわせている。写真は16日、航空ショーの会場で撮影された、イスラエルのスタートアップ企業、エビエーションの「アリス」(2019年 ロイター/Pascal Rossignol)

動力が完全に電動化された近距離移動用の電気飛行機、欧州航空機大手エアバスのハイブリッド小型機が、今年のパリ国際航空ショーをにぎわせている。

2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を半減させるという航空産業の目標には懐疑的な向きが多いが、彼らはそうした見方を払拭しようと必死だ。

イスラエルのスタートアップ企業、エビエーションは、年内の初飛行が予定されている9人乗りの電気飛行機「アリス」を披露した。

一方、エアバスとサプライヤーのサフランとダヘルは、燃料タンクと電池の両方を積む近距離小型機「エコパルス」の模型を展示している。

欧州ではCO2排出量の削減を目指し、近く各国の経済相らが航空機燃料に対する免税措置の廃止を議論する予定だ。「フライト・シェイミング(空飛ぶ恥)」と呼ばれる、飛行機による不必要な移動を批判するSNS上の運動も経営者らにプレッシャーを与えており、電動飛行機への移行を後押ししている。

しかし、自動車と違って電気飛行機は、バッテリーを積んで空へ飛ばなければならない。そのため機体の大きさと航続距離が限定されてしまう。

サフランの研究・技術・イノベーション担当のステファン・キュエール氏は、「航空機にとって、バッテリーの重量による影響は桁違いだ」と語る。

エコパルスはエンジンで鼻先のプロペラと発電機を動かし、蓄電されたバッテリーから両翼のプロペラに電力を供給することで、最長数百キロのフライトで20─40%の燃料を節約できる。

エコパルスはまだデザイン画の段階だが、滑らかなフォルムが自慢の「アリス」はル・ブルジェ空港の滑走路で見ることができた。開発したイスラエルのエビエーションは、今年中に初飛行を行う予定で、米政府の型式証明を2022年までに取得することを目指している。

アリスは1回の充電で高度3000メートル、時速444キロで1046キロの距離を飛べる。同社は航空ショーの会場で、マサチューセッツ州を拠点とする航空会社ケープエアーが10機以上の購入オプションを取得したと発表した。1機当たりの価格は400万ドル(約4億3000万円)だ。

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