最新記事

映画

アカデミー監督賞受賞「ROMA/ローマ」はホントに映画? ボーダーレス化が進む映画ビジネス

2019年3月14日(木)20時00分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

今年のアカデミー賞で3賞を受賞したネットフリックスオリジナル映画「ROMA/ローマ」のアルフォンソ・キュアロン監督。 Mike Segar / REUTERS

<アカデミー賞監督賞の受賞作が劇場公開へ。一見当たり前のようだが、実は今年の受賞作は日本で初めて劇場で上映されるネットフリックス映画だ>

3月9日に日本でも劇場公開された「ROMA/ローマ」。2月25日に授賞式が行われた第91回米アカデミー賞では10部門にノミネートされ、監督賞、撮影賞、外国語映画賞を受賞した。ほかにも第75回ベネチア映画祭や第76回ゴールデングローブ賞など多くの映画祭で上映され受賞をしており、2018年の夏からすでに台風の目となるだろうと注目されていた。

監督のアルフォンソ・キュアロンは日本では「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」や「ゼロ・グラビティ」などが有名だろう。「ROMA/ローマ」は、モノクロの映像美が印象的なヒューマンドラマで、まだこの映画を見ていない人も浜辺で肩を寄せ合い抱き合ってる人たちの印象的で美しいポスターを見かけたことがあるかもしれない。

さて、この「ROMA/ローマ」だが、作品の内容以外のところでもニュースに取り上げられることが多かった。それは、「ネットフリックス映画は果たして映画と認めてもよいのか?」という問題である。今までも何度か是非を問われてきたこのイシューだが、「ROMA/ローマ」が多くの映画賞を受賞し注目を集めたことで、ネットフリックス映画についてこれまでにないほどの賛否が飛び交っているのだ。

映画館で上映しないのに「映画祭」で賞を獲れる?

そもそも、ネットフリックスオリジナル映画はなぜ各映画祭で問題視されるようになったのか?

ネットフリックスはアメリカ発の映像ストリーミング配信会社である。「ネットフリックスオリジナル映画」と一概に言っても「自社制作」や「他社が制作した作品の世界(もしくは一部の国)の独占配信権をネットフリックスがもっている場合」「ネットフリックスが制作を発注した場合」など様々なパターンがあるが、基本的に制作される映画も配信を目的にされたものが多い。映画館で公開を目的としない作品を果たして"映画"とカテゴライズしてもよいのかが議論を呼んでいるのである。

特に、2017年のカンヌ映画祭ではこの問題が大きく取り上げられた。カンヌ映画祭の規定は、コンペティション部門の作品について「フランス国内で劇場公開された作品であること」や、「封切日から動画配信までのインターバル期間」などが厳しいと有名だが、この年の映画祭ではネットフリックス映画が2本、アマゾン映画が1本出品された。上映時、ネットフリックスのロゴがスクリーンに映し出されると観客席の一部からブーイングが巻き起こったほど観客側も賛否が分かれた。結局、翌2018年のカンヌ映画祭にはネットフリックスは作品を出品しないことを発表した。

とはいえ、大部分の観客はその作品が面白ければ映画館で見ようが家で見ようが関係ないというのが本音だろう。今までは映画館の上映時間に合わせて足を運んでいた観客が、今では自分で映画を見る場所とタイミングを選ぶ時代になったといえる。まさに映画とTVとのボーダレス時代だ。実際、ネットフリックスは2020年以降も多くの映画を製作することを発表している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シリア、アレッポでの一時停戦を宣言 クルド人勢力に

ビジネス

午前の日経平均は反発、ファーストリテが押し上げ バ

ワールド

メキシコ中銀、通商の不確実性と新関税で26年の利下

ワールド

南ア製造業PMI、12月は25年最低水準に 在庫と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中