最新記事

温暖化対策

米大企業81社が気候変動を認める決議、オバマに追い風

大勢の経営者が、気候変動は実際にあって原因は人間の活動だという認識を共有した

2015年10月20日(火)16時31分
ジャック・マルティネス

議会より進歩的? オバマと気候変動について話し合うために集まったCEOたち Kevin Lamarque-REUTERS

 米共和党は、気候変動の問題について民主党を批判するときに決まってこう言う。「CO2排出量の上限や炭素税などの環境規制はビジネスに悪影響を及ぼす」。これに対してオバマ大統領は異論を唱えている。今年9月、同大統領は米国主要企業のCEOで構成されるビジネス・ラウンドテーブルに対して、「環境にやさしくすることは、地球にとっても、企業業績にとってもよいものだ」と述べた。企業側は果たして、どう考えているのだろうか?

COP21に向けてビジネス界のお墨付き

 ホワイトハウスにとって喜ばしいことに、現在までに81社が、オバマ政権が進める「気候変動に関する米企業の行動」決議に支持を表明した。決議に拘束力はないものの、年内にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)を前に、政府は事実上、ビジネス界のお墨付きを得たかたちだ。

 この支持表明は、新しい税金や規制を導入するためのものではない。むしろ、気候変動は現実に起きていること、人間が引き起こした問題であること、誰もが目を向けるべき問題であるという認識を、トップ企業が共有したという点で意味がある。

 オバマ政権のこの政策には、アップルやグーグル、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ、ペプシ、コカ・コーラなどの顔ぶれに加え、GM(ゼネラル・モーターズ)やゼネラル・エレクトリック(GE)アルコアなどの重厚長大産業までが署名している。

 これはつまり、彼らが100%再生可能エネルギーを購入することや、サプライチェーンにおける森林伐採の減少に取り組むことを、はっきりと約束したということだ。また各企業は、それぞれ独自のビジネス慣習に関連した具体的ポリシーも掲げている。

 オバマ政権が気候変動に関して実践してきたすべての取り組みをはっきりと承認したわけではないが、たとえ一部であっても、まったく承認しないよりはましだ。

 気候変動への取り組みとなると、「議論は行動につながるのか?」という疑問がつねにつきまとう。例えば、オバマ大統領は、「キャップ・アンド・トレード(排出権取引)」制度の全国レベルの導入を公約していたが叶わなかった。共和党議会のしぶとい抵抗に直面したオバマ大統領は行政命令でグリーン構想に着手し、環境保護庁(EPA)など連邦機関を使って排ガス規制を引き上げ、新しい環境基準を作成するよう求めている。

 何はともあれ、「気候変動はない」と否定する論者と同類と思われてきた企業が決議に署名したことは、一部の企業は気候変動を受け入れることについて議会に先んじていることを示している。署名企業には電力会社やエネルギー企業の名も含まれていたが、石炭や石油業界の代表的企業の名は含まれていなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、FRB議長発言で9

ワールド

米、パキスタンと協定締結 石油開発で協力へ=トラン

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBが金利据え置き

ビジネス

米マイクロソフト、4─6月売上高が予想上回る アジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中