最新記事

テクノロジー

時速1200キロの超高速列車、走行実験へコース建設

真空のチューブに吸い込まれるように走る「未来の鉄道」がやってくる

2015年10月27日(火)18時00分
ナタリー・イルスリー

驚異の技術 旅客機を代替するスピード輸送を目指す Hyperloop Transportation Technologies-YOUTUBE

 ハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジーズ(HTT)社は、2015年11月から1億5000万ドルを投じて、同社の超高速列車用コースの建設に取りかかると発表した。

 HTT社のビーボップ・ガブリエラ・グレスタ最高執行責任者(COO)によると、この輸送システムの実物大プロトタイプは、計画都市の建設が進むカリフォルニア州クエイバレーの約8キロの区間をカバーし、完成までに32カ月かかる見込みだという。

 グレスタは先週、ロンドンで開催されたイベント「未来への交通」で、同社の構想について説明を行なった。

 ハイパーループのシステムでは、自動運転カプセルが高架チューブのなかの真空と磁石の強力な力で引き寄せられて移動する。このプロトタイプが成功すれば、乗客の移動スピードは最高で時速約1220キロに達する。

 このハイパーループ構想は、電気自動車のテスラ・モーターズや宇宙開発のスペースXを創業した億万長者、イーロン・マスクが2013年8月に発表したもの。最終的にはロサンゼルスからサンフランシスコ・ベイエリアまでの走行を目指している。

 ハイパーループの超高速列車は太陽光、風力、運動エネルギーなどの再生可能エネルギーを動力源とするだけでなく、余剰エネルギーも生産する。HTT社は、これを販売して利益をあげようとしているようだ。「生成するエネルギーよりも消費エネルギーの方が少ないので、電力を転売することができる」とグレスタは建築・デザイン雑誌の『Dezeen』に語った。「この仕組みなら、6~8年で投資を回収できる」

 高架チューブを建設したら、無人カプセルを最高速度で走行させるテストを行なう予定だ。「地上におけるあらゆる記録を破ることになるだろう」とグレスタは言う。

「ハイパーループは、ロサンゼルス・サンフランシスコ間の全航空便に取って代わることもできる」とグレスタは言う。「間違いなく航空産業を破壊する」

 テストの終了後は、移植用臓器といった一刻を争うものを輸送するための専用「ポッド」の開発に取りかかりたいという。完全実用化の暁には、1時間当たり約3400人の乗客を、ロサンゼルス~サンフランシスコ・ベイエリア間で輸送できる見込みだ。

 HTT社は、この輸送システムを全世界に拡大しようと狙っている。ロンドン~グラスゴーのルートも検討中で、事業規模は60~80億ドルになりそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、大型減税法案可決をアピール アイオワ州

ワールド

IMF、スリランカ向け金融支援の4回目審査を承認

ビジネス

ドイツ銀、グローバル投資銀行部門で助言担当幹部の役

ビジネス

ドイツ自動車対米輸出、4・5両月とも減少 トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中