最新記事

債務危機

EU離脱後のギリシャ

通貨が紙くずになるだけではなく、民主主義が終わり、西側の安全保障も危うくなりかねない

2015年6月30日(火)18時04分
ポール・エイムズ

EUに残りたい ギリシャ国旗(左)とEUの旗を掲げて国会議事堂に向かう人々 Yannis Behrakis-REUTERS

 イギリスはEU(欧州連合)を離脱すべきだ、と叫ぶ人々は、EU非加盟のノルウェーやスイスを例に挙げ、EUなどなくても国家は繁栄できると主張する。

 しかし、EU離脱の瀬戸際まで来ているギリシャの政治家たちは、離脱後のビジョンについて多くを語らない。

 その理由は簡単だ。大半のシナリオがあまりにも暗いからだ。世界にとっても他人事ではない。EU離脱後のギリシャが辿りそうな運命を、先例になりそうな他国の例から占うと──。

トルコ

 ギリシャ人は聞きたくないだろうが、彼らの宿敵トルコは、「最良のシナリオ」を提供してくれそうだ。トルコはEUの外で繁栄してきた。2012年までの10年間、トルコの経済成長率は年率5%で推移した。その後は3%まで減速したが、それでも同時期に縮小していたユーロ圏経済に比べればはるかに良い数字だ。

 一人当たりGDPでは、一部のEU加盟国よりもトルコのほうが裕福だ。安定した通貨と健全財政、投資誘致政策などの上に成功を築いてきた。これらはまさに、過去半年間にわたってEUがギリシャに実行を要求し続けて果たされなかった政策だ。

ベネズエラ

 ギリシャ与党の急進左派連合(SYRIZA)は、自給自足による平等主義的ユートピア国家の樹立、という夢を長く抱いてきた。北方の巨大な資本主義国家に対する社会主義政権の反発の表れ、という点ではベネズエラと同じだろう。

 しかし、ギリシャにはベネズエラのような石油資源はない。それにギリシャ人には、SYRIZAが理想とする社会主義的で地味な生活のために西側の自由主義や消費至上主義を諦める気などないだろう。

ベラルーシ

 EUを離脱しても、ギリシャが孤立するとは限らない。アレクシス・ツィプラス首相は6月、ロシアのサンクトペテルブルグを訪れ、両国間の歴史的・文化的な絆を強調。プーチン大統領がEUに対抗する国家連合として提唱する「ユーラシア連合」構想を高く評価した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中