最新記事

債務危機

EU離脱後のギリシャ

2015年6月30日(火)18時04分
ポール・エイムズ

 プーチンのほうにも、ギリシャと仲良くしたい理由がある。自国の経済不振にも関わらず、ギリシャに救いの手を差し伸べる可能性は十分にある。

 これはアメリカが最も懸念するシナリオだ。ギリシャは戦略的な要衝に位置している。今はギリシャは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だが、ベラルーシのようにロシアの勢力下に取り込まれることになれば、NATOの力は大きく削がれかねない。

コソボ

 ギリシャは、政情が不安定で貧困にあえぐ第二のコソボになるかもしれない。EU離脱後のギリシャはユーロ以前の自国通貨ドラクマに復帰するが、インフレと資本逃避のせいでドラクマは紙くず同然になる。EUの課す規律がなくなれば、根深い縁故主義と汚職が悪化することも十分ありうる。

 ギリシャは、同じバルカン半島に属するコソボを教訓とすべきだ。1999年にセルビアから独立したコソボは、失業率が35%に達している。明るい未来を求めてEU諸国に旅立つ移民が後を絶たない。

アイスランド

 アイスランドは世界金融危機で打ちのめされた。残された負債があまりに大きいので、本来強烈に自立心の強いこの国が、ユーロに参加することまで考えた。

 だが実際は、自国通貨アイスランド・クローナを大幅に切り下げた。さらに外国人が保有する資産の国外持ち出しに課税するなどの強力な資本規制を導入する一方で、経営の傾いた国内の大手銀行を潰した。

 おかげで経済は徐々に回復。2013年には3.6%の成長を遂げた(翌年はやや減速)。ギリシャ政府のなかには、ユーロ圏の外で経済と通貨の独立を回復し、自国通貨を切り下げることでアイスランドと似たような復活を遂げようと考えている者もいるに違いない。

エジプト

 民主制は古代ギリシャで生まれたかもしれないが、今はその強さが問われている。先週末の国会議事堂には野党勢力が集まり、政権党のSYRIZAが憲法を無視して独裁者のように振る舞っていると非難した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中