最新記事

中南米

原油下落でベネズエラが大ピンチ

原油価格の下落に歯止めかからず、ベネズエラのデフォルトリスク高まる

2014年12月2日(火)16時55分
ブリアンナ・リー

経済手腕は? 財政改革が不十分だと指摘されるマドゥロ Reuters

 原油価格が12月1日に5年ぶりの安値を更新したなか、産油国ベネズエラは岐路に立たされている。ベネズエラはここ何カ月間もデフォルトに陥る危機がささやかれていたが、OPEC(石油輸出国機構)が価格を上げるための減産を見送ったことにより、その可能性はさらに高まった。

 先週開かれたOPECの会合でベネズエラは他の加盟諸国に対し減産を求めたが、説得できなかった。サウジアラビアやクウェートなど原油価格の下落に耐え得る国々が、アメリカのシェールガスとの競争力を失わないためにも減産に応じなかったのは、賢明な判断だとアナリストたちはみている。しかし、ベネズエラやナイジェリア、ロシア、イランなどの国にとっては、さらなる経済の混乱が予想される。
 
ベネズエラの通貨ボリバルは1日、対ドルで最安値を更新。国債も、投資家がデフォルトを恐れるために5年ぶりの安値を記録した。

 ニコラス・マドゥロ大統領は、1バレル100ドル以上を保つために闘いを続けると主張している。石油はベネズエラの輸出の約95%を占め、外貨獲得の主要手段でもある。国際的な原油価格は1日、2010年以来初めて70ドルを下回った。 IMF(国際通貨基金)は、ベネズエラがデフォルトに陥らないためには、少なくとも1バレル120ドルが望ましいと予測している。

 OPECで主張が聞き入れられなかったマドゥロ政権は、社会福祉には手をつけずに政府予算を削減することを発表した。政府高官の給与もカットするという。

 しかし、原油価格が上昇しなかった場合の政府の長期的な計画は不透明なままだ。夏に原油が下落する以前から、ベネズエラはインフレや物資の不足、財政赤字に直面していた。

 エコノミストたちは何カ月にもわたりデフォルトのリスクを警告してきたが、「政府の反応は鈍く、市場を落ち着かせるだけの十分な対策は取られていない」と、バンク・オブ・アメリカのレポートは指摘する。経済破綻に陥れば、社会の混乱や暴動まで引き起こす可能性もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中