最新記事

シリコンバレー

グーグルやアップルの「給与カルテル」に集団訴訟

シリコンバレーのソフトウエア技術者が大手各社を訴えた。引き抜き禁止などのカルテルを結んで給与の高騰を抑えていたという

2014年1月16日(木)15時13分
マシュー・イグレシアス

大盤振る舞いの一方で 無料で食べ放題のグーグルの社員食堂は有名だが、給与はケチっていた? Lucy Nicholson-Reuters

 アップルやグーグル、アドビシステムズといった企業が給与水準の引き下げのため雇用カルテルを形成しているという潜在的に巨額の訴えが、アメリカの地方裁判所で受理された。原告は、シリコンバレーで勤務する6万人の労働者だ。告発によれば、これらの企業間では、(給与の高騰を招く)社員の引き抜きを自粛するようカルテルが結ばれている。

 ロイターによれば、問題の発端は11年、5人のソフトウエアエンジニアがアップル、グーグル、アドビシステムズ、インテルなどを給与抑制のためのカルテルを結成したとして訴えたことに始まる。これらの企業間では、互いの従業員を引き抜いたり採用したりしないというカルテルが結ばれていたという。

 被告企業は、労働者から求職の自由と数百万ドル分の雇用機会を奪い、独占禁止法のうちシャーマン法(反トラスト法)とクレイトン法(シャーマン法を補完する法律)に違反したとして訴えられた。

 訴えを裏付ける証拠のほとんどは、被告企業トップ間のメールに基づいている。アップルの前CEOのスティーブ・ジョブズやグーグルの前CEOのエリック・シュミットのやりとりに、引き抜きはやめようという「引き抜き禁止」の合意が明らかになっている部分があると、ロイターは伝えている。

 もし一連の訴えが本当なら、ほぼ間違いなく独占禁止法違反に該当するだろう。ルーシー・コウ地方裁判所判事は、原告に集団訴訟を起こす権利も認めた。

 集団訴訟が認められたことで、原告側はより高額の賠償金を被告側から引き出すことが可能になるのに加え、個別に訴えるよりも訴訟コストが少なく済む。被告側企業に息つく間を与えないほどの圧力を加えることもできる。 

 審議が進み事実がはっきりすれば、きっと面白いことになる。例えばアップルは2年前、電子書籍の価格設定に際しかなり露骨な形でカルテル形成に関与していた。こうした例でもうかがえる通り、アップルという企業そのものに、法律を順守してカルテルを結ばないという思考回路がほとんど存在しないのではないだろうか。

© 2014, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中