最新記事

金融

最新金融用語に見る危機防止の攻防

「プリンシパル・トレード」から「ロンドンの鯨」まで金融業界の暴走を防ぐ専門用語

2013年12月12日(木)18時20分
マイケル・モラン

危機は杞憂? 新法案成立で金融界の強欲を取り締まれるか Lee Jae-Won-Reuters

 100年に一度といわれた世界的な金融危機の発生からはや5年。アメリカ経済は、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和政策もあり徐々に回復の兆しを見せつつある。FRBは、本来議会がやらなければならない経済成長をけん引してきた。

 ただ、世界経済を破綻の淵に追いやった金融危機は本当にもう起こらないのか? 最新の金融用語を解説しながら、アメリカ政府の対応とビッグマネーを虎視眈々と狙う企業の企みを探ってみる。

 まずは「テーパリング」だ。もともと「先細り」を意味するこの用語は、金融業界では政府による量的緩和(QE)が徐々に終わりに向かうことを言う。

 FRBは、経済活性化のためにこれまで市場にどんどんお金を流していたが、その蛇口の栓を次第に閉めていくということだ。

 ただ来年1月に任期を終える米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長と後任のジャネット・イエレン副議長は、量的緩和政策を当面続けるときっぱりと言いきったので、低金利と市場への資金供給は来年中は続くだろう。蛇口の栓はまだ締めない、ということだ。

 中央銀行がこうした金融政策の見通しを発表することを、「フォワードガイダンス」という。これまで金融政策について秘密主義を貫いてきた彼らにとって、新しい試みを表わす言葉だ。

 だがアメリカ経済が回復に向かうにつれて、このガイダンスはそれほど前向きな話ではなくなった。

 バーナンキが今年の夏にテーパリングを早めに行うと「ガイダンス」を行ったことが、新興国市場でちょっとした経済危機を引き起こしたからだ。

 量的緩和の終わりは、たいてい金利の引き上げが伴う。そのため、金利が高くて信頼の高い米国債の方が魅力的だという期待が膨らみ、途上国に流れていた資金がアメリカ市場に逆流し、途上国の通貨価値が下落する事態まで起こった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物、25年は約20%下落 供給過剰巡る懸念で

ワールド

中国、牛肉輸入にセーフガード設定 国内産業保護狙い

ワールド

米欧ウクライナ、戦争終結に向けた対応協議 ゼレンス

ワールド

プーチン氏、ウクライナでの「勝利信じる」 新年演説
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中