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ついにサムスンを切ったアップルの勝算は?

2013年1月18日(金)13時26分
アレックス・クライン(ビジネス担当)

 ほかの企業の製品を排除して「塀で囲んだ庭」をつくり、その中の世界をすべて自社でコントロールするのが、アップルの基本戦略だ。その結果、生み出されるテクノロジーの生態系は、美しくシンプルな半面、極めて閉鎖的な場になる。
このアプローチが裏目に出る場合もある。昨年に、人気の高い地図アプリ「グーグルマップ」をiOSから締め出し、自社の地図アプリに切り替えたところ、不具合が続出。ユーザーの不満を受けて、アップルは謝罪に追い込まれた。

 端的に言えば、アップルはユーザーに対して、外界から閉ざされた原始的な世界で満足することを求める。ユーザーは、アップルが新製品を送り出したり、ソフトウエアをアップデートしたりしたときだけ進化することで納得しなくてはならない。

 アップルは84年のテレビCMで、ジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』に登場する独裁者に業界の巨人IBMを重ね合わせ、同社による業界支配への挑戦を宣言した。

 しかし今、アップルこそがすべてを管理したがる専制支配者に見える。
アップルがサムスンに背を向けるという厳しい道を選んだのは、現経営陣なりに勝算があってのことだろう。しかし、この選択の背後には、前CEOの故スティーブ・ジョブズの影がはっきり見て取れる。

 ライバルに悪態をつき、「塀で囲んだ庭」の中に美しい世界を築き上げてきたのは、ジョブズだった。現経営陣は、ジョブズの建てた壁を一層高くしようとしているのだ。

[2013年1月16日号掲載]

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