最新記事

株価

FB株暴落はIPO前からわかりきっていた

フェイスブック株がウォール街で「落ちるナイフ」と言われたほど危なかった理由の数々

2012年9月6日(木)15時45分
ロブ・コックス(ビジネスコラムニスト)

止血に躍起 ザッカーバーグは9月4日、自分が保有する株は1年間売らないと発表した Jim Urquhart-Reuters

 フェイスブックの株価下落はまだまだ止まりそうにない。8月に一時20ドルを割り込んだ同社の時価総額は5月のIPO(新規株式公開)以降、約500億ドルも減少した。

 この惨状は世界の10億人近いフェイスブック信奉者にはショックかもしれないが、IPOの目論見書を読めば予想できた。上場当初に飛び交っていた危険信号(高過ぎた価格設定、ずさんな企業統治、手ごわいライバル、傷ついたブランド)は未解決で、フェイスブックはウォール街でいう「落ちるナイフ」の典型。投資家が手を出せば「大けが」をしかねない。

 ロイターなどの分析によれば、当初予定していた公募価格の下限の1株28ドルでも、04年に上場した頃のグーグル並みの成長が必要だった。それには年間約1.8倍の増収と同時に高い利ざやも維持する必要があった。

 フェイスブックによれば12年上半期の売上高は前年同期比38%増の22億4000万ドル。しかし、コストは半年間で26億ドルに膨れ上がっている。

 業績としてはまずまずでも、これらの数字はフェイスブックのビジネスモデルのアキレス腱を露呈している──モバイル端末の広告戦略での苦戦だ。モバイル端末の月間利用者数は6月末時点で前年比67%増の5億4300万人と、全ユーザー数の半数を超えた。

 積み重なる失敗は悪循環を生み、数字以外の面でもその将来を脅かしている。実際、市場での低い評価が伝えられるほど、フェイスブックのイメージは傷つく。その結果、ユーザーのフェイスブック離れにつながる恐れがあるばかりか、優秀な人材の確保にも悪影響が出る。

 それでもCEOのザッカーバーグは株主の嘆きを無視できる。1株当たり10個の議決権が付く複数議決権株式を保有しているおかげだ。メディア王ルパート・マードックそっくりのやり口で、これも上場の時点で分かり切っていた。

 ほとんどの投資家が十分な吟味をしなかったことが悔やまれてならない。

© 2012, Slate

[2012年8月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中