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ロシア庶民に学ぶ危機に負けない貯蓄術

通貨ルーブルが暴落し事実上のデフォルトに陥った98年、被害が少なくてすんだ市 民の共通項とは

2012年6月11日(月)12時53分
藤田岳人(本誌記者)

インフレの嵐 90年代末のロシア財政危機でルーブルは紙切れ同然に Joel Sartore-National Geographic/Getty Images

 91年のソ連崩壊後、ロシア経済は大混乱に陥った。国内は激しいインフレに見舞われる一方、主な輸出産品である原油の国際価格が急落。さらに97年のアジア通貨危機の余波もあって通貨ルーブルの信用は失墜、国債の利回りは急騰した。そして98年に政府は対外債務の支払いを停止するなど、事実上、デフォルトに陥った。

 通貨ルーブルは紙切れ同然になり、インフレも加速。資金流出を止めるため国内銀行は営業停止になり預金も国に没収されるなど、市民生活は壊滅的な打撃を受けた。

暴落後に不動産を買いあさる人々も

 家庭菜園で飢えをしのぐ人も多い窮乏のなか、比較的軽傷で危機を乗り切ることができたのは皮肉にも、はなから自国通貨を信用しなかった人々だ。彼らは、働いて稼いだルーブルをドルに交換して「タンス預金」にしていたのだ。

 97年のデータでは、国民は収入の約2割を外貨購入に充てていた。一部の金持ちは国外にもドル口座を持っていた。ルーブル暴落後はドルから見たロシア資産の価値が大幅に安くなったため、不動産を買いあさる人々も現れたほど。

「お上」を信じないほうが自衛になる場合もある、という例だ。

[2012年4月11日号掲載]

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