最新記事

スマートフォン

ノキア+MSの新製品はiPhone以上

スマホに出遅れ巻き返しを図るノキアが発表した新機種ルミア900はデザインでも他を圧倒している

2012年2月23日(木)13時08分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

敗者復活? ルミア900をプレゼンするノキアのエロップCEO Rick Wilking-Reuters

 ほんの5年ほど前まで、マイクロソフトはスマートフォン向けOS市場で覇を競っていた。そしてフィンランドのノキアは、携帯電話機市場で世界最大のシェアを誇っていた。

 この両王者に痛烈なパンチを浴びせたのが、07年に登場したアップルのiPhoneだ。当初は両社とも余裕だった。値段が高くてキーボードもないアップルの電話機なんて売れっこないと、タカをくくっていた。

 ところが売れた。しかもたくさん売れた。米調査会社IDCによれば、ノキアの携帯電話向けOS「シンビアン」のシェアは07年段階の63%から19%へと急降下。マイクロソフトのOSに至っては、かつての13%が今はわずか2%だ。

 この2社が、敗者復活を期して手を結んだ。そして先週、ラスベガスのコンシューマー・エレクトロニクス・ショーで相当に意欲的な新機種を発表した。

「ルミア900」と呼ばれるノキアの新端末は薄くてデザイン性に優れ、4.3インチの画面に800万画素のカメラを搭載。第4世代の高速通信技術LTEにも対応している。

「北米市場におけるノキアの新たな夜明け」(ノキア・アメリカのクリス・ウェバー社長)を告げる機種だと、報道資料にはある。

 OSには、マイクロソフトの開発したウィンドウズフォンの最新版(通称マンゴー)を採用。インターフェースには大きな「タイル」と呼ばれるアプリボタンが表示され、自由にカスタマイズできる。フェースブックに友達が投稿するとすぐにインターフェースにアップデートが反映されるなど、ダイナミックな機能も備えている。

 マイクロソフトとノキアは昨年2月に提携を結び、ノキアは自前のOSシンビアンを見限ってウィンドウズフォンを採用することにした。この路線変更を推進したのは、マイクロソフトの役員からノキアのCEOに転じたスティーブン・エロップだ。

iPhoneが古く見える

 実を言うと、私はしばらく前から1世代前の機種「ルミア800」を使っている。こちらもマンゴーOSを搭載していて、ポリカーボネート樹脂のシームレスなデザインはエレガントで、OSの動作も速い。既にヨーロッパでは人気の機種で、比べてみるとiPhoneが古くさく思えてくる。

 職業柄、私はいくつもの携帯端末を持っていて、すべて電源を入れてある。それで、電話が着信したとき反射的にどの機種を手に取るか(あるいは外出時にどれを持ち出すか)と言うと、これが決まってルミア800なのだ。

 ルミア900はさらに進化している。画面のサイズは800より大きくなったが、ヨーロピアンテイストのモダンなデザインはそのままだ。

 実際、デザイン面に関する限り、ノキアのルミア900はアップルの製品を超えたと言っていいだろう。

 果たしてノキア版のウィンドウズフォンはアメリカ市場に受け入れられるだろうか。アップルとグーグルが市場を分け合うアメリカに新規参入の余地はないとの見方もある。だがノキアのデザイン主任マーコ・アハティサーリは反論する。「みんなiPhoneのOSを超えるものはあり得ないと思っているが、そんなことはない」

 実際、携帯市場は巨大で今も拡大し続けているから、まだ新規参入で成功する余地はあるだろう。アップルとグーグル、マイクロソフト、果たして生き残るのはどのOSか。ある業界人に言わせれば「全部」だ。ルミア900を見ていると、私にもそう思えてくる。

[2012年1月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ

ワールド

米上院議員が戦争権限決議案、トランプ氏のイラン軍事

ビジネス

NTTドコモ、 CARTAHDにTOB 親会社の電
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中